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『柳生忍法帖(下) 山田風太郎忍法帖10』[山田風太郎/講談社文庫]
『柳生忍法帖』、後編。舞台は明成の本拠である会津に移り、さらに熾烈な戦いが繰り広げられていくことになります。
会津入り前後で、登場人物に若干テコ入れあり。味方陣営では、前半はあまりおおっぴらには動いていなかった沢庵和尚も積極的に動いてくるし、話の途中で明成に攫われ辱められたがために彼らと行動を共にするようになるおとね、そして沢庵和尚の弟子で堀の女たちの手助けに乗り出したお坊様は後半戦のキーパーソンになってきます。もちろん、十兵衛の存在がより大きくなるのは言うに及ばず。一方の敵陣営も流石に本拠地というだけあって、「七本槍」には劣るものの精鋭ぞろいの芦名衆とそれらを束ねる魔人・芦名銅伯、そして銅伯の娘で明成の側妾おゆらといった面々が登場し、戦力強化。何より、会津丸ごと人質に取っているともいえる敵のやり口に、十兵衛や堀の女たちは上巻以上の苦戦を強いられることに。冷静に読めば少なからずご都合主義っぽいと思う部分もないではないのですが、読書中はそれが全く些細なことと思えるほど、緩急の利いた展開、逆転に次ぐ逆転で最後まで読者を引っ張って行ってしまう筆力は単純にすごいと思います。……とはいうものの、物語の発端でありメインであるはずの堀の女たちと「七本槍」の影が微妙ーに薄くなってしまうのばかりはやっぱりちょっと残念だと思うわけですが。
見せ場の多い下巻の中でもとりわけ圧巻なのは、とある理由から沢庵和尚が敵に屈するのもやむなしと判断し、十兵衛と堀の女たちを呼び寄せる場面。女たちをむざむざ死なせるわけにはいかぬと独り鶴ヶ城に乗り込んできた十兵衛を、自身もみすみす彼女たちを死なせてしまうことに苦悩しながらそれでもなんとか説得しようとする沢庵に対して、明朗快活な答えを返した十兵衛の格好よさはもはや反則級。あと、「七本槍」の一人、隻腕の剣鬼・漆戸虹七郎との桜の下での一騎討ちの場面は、その臨場感に思わず息をのんでしまいます。
そして、この人のことも忘れちゃいけない、というのがおゆら様。作中でのおゆらはまぎれもなく残虐淫蕩な悪女なんだけど、そうと分かっていてもなお、最後の一場で彼女が吐露した、一人の女性として初めて抱いたあまりにも普通の、まるで純情可憐な少女のような願いは、それが真実本心から出た言葉であるからこそ胸に響きます。つーか、これでおゆら様が正ヒロインの座をかっさらっていったというのにたぶん異論はないはずだ(笑)
堀の女たちの復讐はどのような結末を迎えるのか。そこまで語るのはあまりにも野暮だろうから語りませんが、穏やかさの中にほんのり切なさ漂う終幕は、格別です。
0808購入メモ(その1)。
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『柳生忍法帖(上) 山田風太郎忍法帖9』[山田風太郎/講談社文庫]
山風忍法帖ファンの間でも特に人気のある『柳生忍法帖』、前編。十兵衛三部作の1作目という言い方もありですね。ともあれコミック版完結記念というわけで、原作再読。
暴虐の限りをつくす会津藩主・加藤明成と袂を分かった家老・堀主水とその一族。怒り狂った明成は、一騎当千の武芸の達人であり懐刀でもある「会津七本槍」に命じ高野山に逃れた堀一族の男を捕らえさせる。さらに「七本槍」は男子禁制の東慶寺に押し入り、寺に預けられていた堀一族の女たちまでも虐殺。あわや全滅というところで偶然参拝に訪れた千姫によって7人の女のみが難を逃れたものの、江戸に送られた男たちもほどなく惨殺されてしまう。復讐を誓う7人の女たちだが、武家の娘とはいえか弱い女でしかない彼女たちには仇討ちなど夢のまた夢。千姫に相談を持ちかけられた沢庵和尚は、柳生十兵衛を彼女たちの指南役として推薦する――というのが、物語の導入部分のざっくりしたあらすじ。ちなみに、「忍法帖」シリーズに分類されているけれど、実はあまり「忍法」が登場しないという特徴もあったりする。
『柳生忍法帖』と銘打たれているものの、作中における十兵衛の役割に女たちの指南役であり軍師役であるという制約がついているのが面白さの一要因になってます。十兵衛自身が相手をするなら楽勝……とまではいかなくても十二分に渡り合えるけれど、女たちの手で仇討ちを成し遂げさせなければならないというわけで、女たちを鍛錬する一方で、あれこれと手を打って「勝てる」状況を作り上げていくのですが。明成と「七本槍」も陰険な反撃をしてきたり悪逆無道ぶりを事あるごとに発揮してくれたりする以上、常に思い描いたように事が運ぶということはなく、絶体絶命の危機に陥ることもたびたび。その絶望的な状況をどう覆していくのか、先の読めない展開に文字通り目が離せなくなってしまいます。
また、十兵衛の指導は受けているものの達人には程遠い腕前でしかない堀の女たちが、しかし智慧を巡らし互いに連携することで、超絶的な腕前を誇る「七本槍」の隙や油断を突いて斃していくという展開はなかなか爽快。一方、堀の女たちの仇である「七本槍」は……明成が駄目すぎるので余計な苦労を強いられて実力が発揮できてるんだかなんなんだか状態になってしまうこともしばしばで、ほんのちょっぴりぐらい気の毒になったりしなくもないんですが、まぁ為した所業を思えばやっぱり同情の余地はないかとすぐに思い直したり(鬼)
多くの犠牲を出しながらも仇敵を追い詰めていく堀の女たちは、無事本懐を遂げることができるのか。明成の本拠地・会津に戦いの舞台が移すこの先、どのような戦いが繰り広げられるのか。いろいろ期待を煽られつつ、物語は下巻へと続きます。
2008年9月の購入予定。
毎月恒例、ほぼ購入確定組の備忘録。
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