『女王の化粧師』[千花鶏/ビーズログ文庫]

人気WEB小説(まず自サイトで公開された後、なろうやカクヨムにも転載されている様子)の書籍化。あらすじ読んだ感じ好きそうな話だったのに加えてみりおんぐらむのt-snowさんが以前からオススメされていたのもあって、購入してみました。WEB版は未読。

5人の貴族令嬢たちが次期女王の座を争っている小国を舞台に、花街の化粧師・ダイが女王候補の一人の専属にと勧誘されるところから物語が始まります。
この1冊だけだと本当にメイン登場人物紹介&導入編という感じ。主人公であるダイの仕事に対する真摯な姿勢と率直な物言いに好感を持ち(読んでて、化粧苦手だからって日頃手を抜いててすみません……という気分にちょっとなる)、ダイが仕えることになる「女王の座から最も遠い」と言われる癇癪持ちのミズウィーリ家令嬢・マリアージュの、しかし垣間見える本質と成長の片鱗ににこにこしながら読み終えました。このふたり以外にも、ダイを直々に勧誘してきたミズウィーリ家当主代行・ヒースやダイの養親である娼館の主アスマ、職場仲間のティティ等、他の登場人物もそれぞれ魅力的。一方で、読んでいてちょこちょこ「おや?」と首をかしげる描写もあり。結構長い話だから先に続く伏線なんだろうと思いますが、人間関係含めて今後どのように回収されていくのかも気になるところです。

ダイがマリアージュを叱り飛ばしたところで1巻は幕となりましたが、これ、もちろん続きは近々出るんですよね? 楽しみに待ってます。

作品名 : 女王の化粧師
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著者名 : 千花鶏
出版社 : ビーズログ文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-735523-1
発行日 : 2019/3/15

『叡智の図書館と十の謎』[多崎礼/中公文庫]

雑誌「BOC」で連載されていた作品の文庫化。裏表紙の紹介では長編となってますが、短編集というほうがしっくりくるような。連作短編というには各話の独立性が高めだし。

古今東西の知識全てを収めた図書館。長い旅路の果てに辿り着いた旅人。10本の鎖で縛められた扉を守る乙女像の謎掛けに、旅人は正しく答えて叡智の図書館に至ることができるのか――という大枠の物語の中に、守り人の乙女の出す謎に対する答えを導き出すために旅人が携えた石版が物語を映し出すという形で短編が組み込まれているんですが、各話様々な趣向を凝らした内容で楽しめました。個人的には、第5問と第6問、第7問が好きかなー。
大枠の物語のほうは、徐々に人間味を増していく乙女をかわいいなーと微笑ましい気分でみる一方でこの変化が彼女にとって本当に好ましいものなのかどうかと考えながら読み進めていたら……なるほど、そういう着地点かーという。またいつか、永い時の果てに彼らが邂逅する日がくるといいな、と思う終幕でした。

作品名 : 叡智の図書館と十の謎
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著者名 : 多崎礼
出版社 : 中公文庫(中央公論新社)
ISBN  : 978-4-12-206698-4
発行日 : 2019/2/25

『薬屋のひとりごと 8』[日向夏/ヒーロー文庫]

中華風架空王朝を舞台にした宮廷ミステリ&ラブコメ、8巻目。

今回はなろう掲載中のWEB版壬氏編1~26を加筆修正した内容。変人軍師・羅漢主催の碁大会がメインなので息抜き的な気分で読んでいたら、最後に不意打ちを喰らった感じ。彼の猫猫に対する感情を否定はしないけど、それはちょっと待てー!と言いたくなるやつだった。いや、猫猫も別に彼を嫌ってはいない(むしろ彼女の基準に照らし合わせればかなり情は移ってるし好意的だけど)とわかってるけど、彼らの立場的にすんなり結ばれるのは難しいだろうと見当もつくけど、まさか変人軍師に使った手の(ある意味で)変形版かつ強硬手段でくるとは……うーん、妙なところで思い切りがいい。彼らの関係にとってこれがひとつの転換点になるのは間違いなさそうですが、この先が楽しみなような不安なような。彼絡み以外でもなんだかんだと人がいいというか信頼されると裏切れない猫猫には頑張ってと言いたくなりましたね……。あと、どうやら「約束」が守れなくなってしまった帝は、うん、ご愁傷様です。
らぶ(?)方面以外では、玉葉后の親族周りや外敵、飛蝗問題など問題がじわりじわりと進行中。次巻以降で本格的にこの辺りの問題に取り組んでいくのだろうけれど、どんな決着が待っているのやら。個人的には今回あからさまに示唆された感がある阿多の現状と小蘭の勤め先が気になってるんだけど、今後関わってくるのかな。

作品名 : 薬屋のひとりごと 8
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著者名 : 日向夏
出版社 : ヒーロー文庫(主婦の友社)
ISBN  : 978-4-07-436884-6
発行日 : 2019/2/28

『天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3』[小川一水/ハヤカワ文庫JA]

大河SFシリーズ最終章完結編。

冥王斑を持って銀河を席巻するミスチフ=オムニフロラ。太陽系人類が対抗手段として打ち出したのは、新たな「魅力的な種」を生み出すことだったが……という前巻の展開から、あと1冊でどう物語をたたむんだろうと思ったら! ここまできてまたそういうどんでん返しするのー!?と言いたくなるような展開からそれでも諦めないヒトたちの戦いとそれぞれの決着、そこからさらに先へと続いていく歩み、そして、人が抱く願い――と、これでもかというぐらいに1冊にいろいろと詰め込まれていた感じ。しかも、その詰め込み具合がバランスが良くて無理やりまとめた印象はないという。さすがに大局的な視点がやや増量された関係か、個々の物語の結末はご想像におまかせします、なところもあったけれど。
どこを語ってもネタバレになりそうなのですが、とりあえずお気に入りの場面は181p.でのアクリラの名乗りと、292p.でのリリーの宣言ですね。あと、断章九一の先にはどんな世界が広がっているのか、彼らの旅路を見てみたくなります。いつか何らかの形でサブエピソードとして発表してくださったら嬉しいなあ。そして、その名が10巻のサブタイトルにもなっている彼女のエピソードには、PART1で描かれた彼女の親友サイドのことも思い出して、ただ涙しました……

全10章17冊、約10年付き合ったシリーズの完結だけに、本を閉じたときは「ああ、読み終わってしまったんだなあ」と、ちょっとしんみりしつつ、この物語を書ききってくださった作者様に、最大級の感謝を捧げます。

作品名 : 天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3
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著者名 : 小川一水
出版社 : ハヤカワ文庫JA(早川書房)
ISBN  : 978-4-15-031362-3
発行日 : 2019/2/20