江戸の町を舞台に、とある出来事をきっかけに妖怪の子供の一時預かりをすることになった少年・弥助とその周囲に集まる妖怪や人の繰り広げる時代劇妖怪ファンタジー、6冊目。
1巻は導入編、それ以降は登場人物たちに関係の変化はありつつも基本1冊完結or短編集形式で続いているシリーズなので、これまでもまったり楽しく読んでたこのシリーズ。それをなぜ急に感想を書く気になったかといえば、今回は白蜜姫がメインのお話だったから! ………いや、厳密には同一妖怪でないかもしれないんですけど。白蜜姫というのは、この作者さんが書かれていた児童向け文庫シリーズ「鬼ヶ辻にあやかしあり」(全3巻)の登場人物で、欲の色に染まった魂を集めるのが趣味で自分好みの魂を持った悪人を探すために人間と持ちつ持たれつで狩りを行う、強大な力を持つ猫の妖。児童向けなのにさらっとエグいこのシリーズを設定含めてとても気に入っていたので、こちらに「王蜜の君」としてひょっこり登場したときには大喜び。以来、彼女が登場するたびににこにことしていたら、今回は興味本位で人間(=弥助)のところに居候しにきてしかも仮の名前として「白蜜」と名乗るという、以前からのファンにはサービスでしかない、紛うことなきメイン回ですよ!!
そんなわけで、個人的にテンション上がりまくった状態で読んだ今回のお話。5巻(レギュラー登場人物のひとり、久蔵の嫁取り話)から続いて外伝的な雰囲気だったかなー。白蜜姫、このシリーズでは王蜜の君として通っている猫の妖怪がメインの巻だからか、収録されている各話はどこかしらで猫が絡んでいます。登場する人間の欲深さや身勝手さ、残忍さに嫌な気分になる一方で、甘い誘惑を踏みとどまって運を掴んだ、あるいは不幸から抜け出した人もいたことにほっと一息。「猫首」などという怪しげな呪いのせいで不幸な目にあった猫たちの仇は、相変わらず魂集めが趣味の王蜜の君がしっかりとってくれたので良かった。まさに因果応報。
あとがきによれば7巻もすでに予定されているとのこと。順調にシリーズが続いていて、嬉しい限りです。………ところで、外伝扱いでも「鬼ヶ辻」リライト復刊とかないですかね………