『バッカーノ!1710 Crack Flag』[成田良悟/電撃文庫]

 悪人・善人・悪党・官憲・奇人・変人・人外などなど、一癖も二癖もある連中が入り乱れて繰り広げる馬鹿騒ぎを描いた「バッカーノ!」第11弾。
今回はまだ中世の錬金術師たちが不死となる前の、1710年に起きた出来事を綴った物語であり、1930年代ではテロリストとして名を馳せるヒューイの、おそらくは人生でただ一度の恋愛の物語。

 やりきれない。その一言に尽きる話でした。いや、バッカーノ!でこういう話があるとは思っていなかっただけに、余計にそう思ったのかもですが……嗚呼……。
 既刊での情報通りの結末ではあったけれど……もしかしてこれで上手くまとまったんだろうか?と一瞬思ったのに。むしろそうであってくれれば、と思ったのに。「何故、見つけてしまったんだ」から、そんな僅かな望みが叩き壊されていく展開にあうあうとなった。つーか、今回のエピソードのおかげで、このあとヒューイが何やっても許せそうな気がしてきた……(単純) あと、黒幕の人には相応の報いが下ってくれることを祈らずにはいられない。

 この年代の次は邪悪な変態さんも語り手側にまわってくるようですが……どんな話になるのやら。1930年代、2000年代の続きと併せて気になるところです。

作品名 : バッカーノ!1710 Crack Flag
    【 amazon , BOOKWALKER
著者名 : 成田良悟
出版社 : 電撃文庫(メディアワークス)
ISBN  : 978-4-04-868459-0
発行日 : 2010/4/10

『石霊と氷姫(上・下)』[西魚リツコ/幻狼FANTASIA NOVELS]

 徳間から発売されている「暁と黄昏の狭間」シリーズが評判聞いてるとなかなか面白そうで気になっていた作者さん。折よく幻狼で上下巻の作品が発売されたので、購入してみた。

 ひょんなことからともに旅をすることになった騙り屋のアルと「石霊使い」のテオ。それぞれ目的を持つ二人の行く手には、国家の行く末にも関わる陰謀が待ちうけていて……というのがおおまかな導入。
 感想としては、オーソドックスなファンタジーでなかなか面白かった、という感じ。ただ、ちょっと分量が足りなかったかなぁ……。いや、上巻はアルの結構行き当たりばったりな騙りやら何やらでテンポ良く進んでいくし、下巻になると玉座を狙う輩の陰謀やらも本格的に絡んできてさらに怒涛の展開!でとても面白く読んだのですが。しかし、その分キャラクター同士の関係性とかがちょっと薄くなった印象。せめてアルとテオの珍道中の分量がもう少しあれば、なぁ。でないと、ちょっと後半あそこまで絆が強くなるには弱いんじゃないかな、と思った。

 まぁ、ちょっと物足りなさはありましたが、コンパクトにまとまっていて面白かったことは面白かったです。「暁と黄昏の狭間」も機会があれば読んでみようかな。

作品名 : 石霊と氷姫(下)
    【 amaozn , honto
著者名 : 西魚リツコ
出版社 : 幻狼FANTASIA NOVELS(幻冬舎)
ISBN  : 978-4-344-81897-2
発行日 : 2010/3/31

『三国恋戦記』予約特典CD「月下の争奪戦」感想。

久々にアクセス解析眺めてみてたら、最近『三国恋戦記~オトメの兵法!~』予約特典CDの感想求めて流れ着いてくる人が一定数いらっしゃるようなので。ニヤニヤゴロゴロした!の一言しか書いてないのに、なんだか罠にかけたみたいで申し訳ないなぁ……と思ったので気合い入れて感想書いてみた。ちなみに、私が予約購入したのは公式とソフマップですが、まぁ、公式は設定原画&SS集効果もあって結構買ってる人多いだろうし、というわけで、ソフマップの特典感想のみ。

ざっくりした感想としては、孟徳が駄目な大人で文若が取り繕ってるけど遠まわしに花ちゃん気にしてて元譲が損な役回りで……あれ、こう書くと本編とあまり変わってないな。えーとまぁとにかく、孟徳軍好きには普通にニヤニヤ楽しめる内容でした。ルートは、孟徳がそれほど花ちゃんに依存してない様子なのに対して文若のデレ度が高いような気がしたので、文若ルートの一幕として脳内認識済み。まぁ、このあたりの判断は人それぞれかな。

以下詳細&ネタばれ感想。興味がなかったりネタばれ嫌な人は回避お願いします。
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1004購入メモ(その1)。

『アメリカ第二次南北戦争』[佐藤賢一/光文社文庫]【amazonbooplebk1
『砂漠の城の真珠姫 宝石宮の王と妖精の妃』[ながと帰葉/集英社コバルト文庫]【amazonbooplebk1
『天命の王妃 占者は未来を描く』[日高砂羽/集英社コバルト文庫]【amazonbooplebk1
『嘘つきは姫君のはじまり 東宮の求婚』[松田志乃ぶ/集英社コバルト文庫]【amazonbooplebk1
『傾国の美姫』[夢野 リコ/集英社コバルト文庫]【amazonbooplebk1
『大仏殿炎上』[井ノ部康之/小学館文庫]【amazonbooplebk1
『喜娘』[梓澤要/新人物文庫]【amazonbooplebk1
『バジリスクの魔法の歌』[パトリシア・A・マキリップ/創元推理文庫]【amazonbooplebk1
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『ミストスピリット―霧のうつし身 (2)試されし王』[ブランドン・サンダースン/ハヤカワ文庫FT]【amazonbooplebk1
『天平冥所図会』[山之口洋/文春文庫]【amazonbooplebk1
『六人の兇王子I ヴァイサルの血』[荻野目悠樹/幻狼FANTASIA NOVELS]【amazonbooplebk1
『カルテット それが彼らの音楽だった』[小竹清彦/幻狼FANTASIA NOVELS]【amazonbooplebk1
『石霊と氷姫(下)』[西魚リツコ/幻狼FANTASIA NOVELS]【amaoznbooplebk1
『白川静読本』[平凡社編]【amaoznbooplebk1
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『六人の兇王子I ヴァイサルの血』[荻野目悠樹/幻狼FANTASIA NOVELS]

 ここ数年はスペオペ系の作品を発表されていた作者氏ですが、デビュー当時は架空歴史ファンタジーを手掛けておられまして。今回は、コバルト文庫で書かれていたシリーズ(既刊3冊。うちき……続きが出なかった。)を加筆修正したうえでの復刊、とのことです。……いや、続きが読みたいなぁと思いつつ、さすがに諦めてたわ……だって3巻発売からざっと13年も経ってるし……うん、やっぱり最後まで希望を捨ててはいけないということですね!(いろいろ思い出して握りこぶし)

 で、旧巻を手放してしまっているので、久々に読んだ感想。少しぐらい印象変わってるかと思いきや、やっぱり酷い話でした(褒め言葉) この作者さんの初期作品を読んだことがある方はまぁ、この人の架空歴史系がどういうノリかご存じと思うのですが、この作品も例に洩れず救いがなかなか見えない鬱ファンタジーなのですよね。1段上ったあとに3段ぐらい落とされる、みたいな。導入は、世界の破滅を目論む宗教結社に異能を与えられ、養育された青年ギヴァが、任務で赴いた地で出会った姫君と恋に落ち……というとても王道なものなのですが、それがどうしてこうなるんですか!というような方向にごろごろ転がっていくのですよね……(遠い目)
 つーか改めて読んで思ったけど、ギヴァの「運命の女」となるイエルマが実に嫌な女だなぁ。もちろん、彼女の生まれ育った境遇に同情する余地が全くないとは言いませんが、その同情が全て消し飛ぶぐらいの愚かさ弱さにイラっとするというか……同性であるから余計に見方が厳しくなるのかもしれませんが。それを差し引いても、いくぶん嫉妬もあっただろうアンナ・マリアの言葉に深く同意せざるをえない。

 さて、心身ともに傷つきながら辛くも生き残ったギヴァ。しかし、残る兄弟の魔の手はすでに身近にまで迫っていて……自身の望みとは裏腹に、死闘に身を投じざるをえないギヴァの行く末は如何に。新装版で加わった同行者(ただし、別に味方ではない)の存在が、少しぐらいギヴァにとって救いとなるといいのだけれど……とりあえず、変態王子サーリフ編がどういう具合になるのか、楽しみなような怖いような。

作品名 : 六人の兇王子I ヴァイサルの血
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著者名 : 荻野目悠樹
出版社 : 幻狼FANTASIA NOVELS(幻冬舎)
ISBN  : 978-4-344-81922-1
発行日 : 2015/3/1