『六人の兇王子I ヴァイサルの血』[荻野目悠樹/幻狼FANTASIA NOVELS]

 ここ数年はスペオペ系の作品を発表されていた作者氏ですが、デビュー当時は架空歴史ファンタジーを手掛けておられまして。今回は、コバルト文庫で書かれていたシリーズ(既刊3冊。うちき……続きが出なかった。)を加筆修正したうえでの復刊、とのことです。……いや、続きが読みたいなぁと思いつつ、さすがに諦めてたわ……だって3巻発売からざっと13年も経ってるし……うん、やっぱり最後まで希望を捨ててはいけないということですね!(いろいろ思い出して握りこぶし)

 で、旧巻を手放してしまっているので、久々に読んだ感想。少しぐらい印象変わってるかと思いきや、やっぱり酷い話でした(褒め言葉) この作者さんの初期作品を読んだことがある方はまぁ、この人の架空歴史系がどういうノリかご存じと思うのですが、この作品も例に洩れず救いがなかなか見えない鬱ファンタジーなのですよね。1段上ったあとに3段ぐらい落とされる、みたいな。導入は、世界の破滅を目論む宗教結社に異能を与えられ、養育された青年ギヴァが、任務で赴いた地で出会った姫君と恋に落ち……というとても王道なものなのですが、それがどうしてこうなるんですか!というような方向にごろごろ転がっていくのですよね……(遠い目)
 つーか改めて読んで思ったけど、ギヴァの「運命の女」となるイエルマが実に嫌な女だなぁ。もちろん、彼女の生まれ育った境遇に同情する余地が全くないとは言いませんが、その同情が全て消し飛ぶぐらいの愚かさ弱さにイラっとするというか……同性であるから余計に見方が厳しくなるのかもしれませんが。それを差し引いても、いくぶん嫉妬もあっただろうアンナ・マリアの言葉に深く同意せざるをえない。

 さて、心身ともに傷つきながら辛くも生き残ったギヴァ。しかし、残る兄弟の魔の手はすでに身近にまで迫っていて……自身の望みとは裏腹に、死闘に身を投じざるをえないギヴァの行く末は如何に。新装版で加わった同行者(ただし、別に味方ではない)の存在が、少しぐらいギヴァにとって救いとなるといいのだけれど……とりあえず、変態王子サーリフ編がどういう具合になるのか、楽しみなような怖いような。

作品名 : 六人の兇王子I ヴァイサルの血
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著者名 : 荻野目悠樹
出版社 : 幻狼FANTASIA NOVELS(幻冬舎)
ISBN  : 978-4-344-81922-1
発行日 : 2015/3/1

“『六人の兇王子I ヴァイサルの血』[荻野目悠樹/幻狼FANTASIA NOVELS]” への2件の返信

  1. 僕も当時読んでたクチです。イエルマの愚かさは哀しくなりますよね。そんなことで……と愕然とします。普通のファンタジーなら手に手を取って逃げる場面であれは衝撃でした(まあ作風わかってはいましたが)。

  2. お仲間! コバルトでは流石に読者の主流から外れたのか途中中断となりましたが、今回は最後まで読めると良いですねー。

    >イエルマの愚かさは哀しくなりますよね。そんなことで……と愕然とします。
    >普通のファンタジーなら手に手を取って逃げる場面であれは衝撃でした(まあ作風わかってはいましたが)。
    さすがに、初めて読んだ時は、「え、これはありなの?」という感じでぽかんとしました。
    手に手をとって逃げたものの~な展開までは予想したのですが……。

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