大財閥・遠々原の創始者に養子として引き取られた少年・節。ある日突然花嫁候補だという5人の少女と同居することになったが、花嫁候補たちは遠々原――ひいては節を破滅させてやりたいと思うほど憎んでる。ただ一人、主人公を愛している「誰か」を選べなければ身の破滅――という、まさに人生のかかったゲームに取り組む節の運命やいかに!という、一種のコンゲームシリーズ2巻目。
今回も面白かったー。いきなり親爺さんに「あと一か月以内で婚約者を選べ」と言われた節。折しも夏休みの臨海学校が始まるというタイミング。決め手を得ようとする節は、婚約者の一人・奥有楽乙音とひょんなことから交流を深めていくことに……という展開。そんなこんなで表紙にも描かれ今回メインになってる奥有楽は、探れば探るほど「正解」だとしか思えない……という。彼女が正解なのか否か悩み抜いた節の結論は、読んでからのお楽しみとして。1巻と比べて小細工もあって、終盤はいろんな意味で「あー」という感じでした。
あと、あとがきにも書かれてたし作中で候補から外された子が指摘したりもしてますが、節が「正解」をあえて選ばないENDもありなのが面白いなーと思います。今のところ、節は「正解」が誰かを探ろうとしているものの、彼とメイドの睦月には彼らなりの目的があるわけで、その目的が達成できるなら相手は(極論してしまえば)誰でもいいわけだしなぁ。そのあたり、最終的に節がどんな決断を下すのかも含めて楽しみなところではあります。
さて、あとがきによればこの先はまた違った展開もありそうで。これまでどおり1巻1殺としても、果たして次は誰がどんなことになるのか、続きが楽しみです。
『天外遊戯』[ミズサワヒロ/小学館ルルル文庫]
昨年ルルル文庫からデビューされた作者さんの新作。デビュー作の『吉原夜伽帳-鬼の見た夢-』が面白かったので、今回も購入してみた。
仙女の鏡のような外面とは裏腹に、出世を生きがいにしている仙女の翆簾。そんな彼女が西王母へ奉げるために大切に育ててきた仙桃が大妖・崋山に喰べ尽くされてしまう。怒りのあまり翆簾が崋山の住処に乗りこんだことから、思わぬ事態になってしまって――という導入から始まる、中華ファンタジー。
事前情報ほとんど仕入れないで買ったので、読みはじめてから「これはもしかしなくても西遊記モチーフ!」とテンションがとてもあがりました(それだけでポイント上がるのもどうなのか)
話としては、桃の盗み食いの代償として地上で千二百の善行を積むことになった崋山とその監視役となった翆簾の世直し道中記その一幕、という体裁。わりと王道展開で、『吉原夜伽帳』ほど雰囲気に惹きこまれることもありませんでしたが(個人的主観)、その分最後までするすると楽しく読めました。しかし、個人的にちょっと残念だったのが、彼らが人界に降りて10年後に遭遇した事件が今回メインの内容だったので、翆簾と崋山の間にすでにそこそこの友好関係が構築できている状況だったことなんですよねー。いや、それはそれで良いと思うんですけど。でもせっかくだから、まだ仲が悪かっただろう頃の凸凹コンビぶりを見てみたかったような気がしなくもない。
まぁでも、全体的には普通に面白かったです。内容的に読みきりでもよさそうだけど、人気が出たら続けられそうでもあるかなぁ……などとちょっと期待もしつつ、次作を楽しみに待ちたいと思います。
『レッド・アドミラル 宿命は絆を試す』[栗原ちひろ/角川ビーンズ文庫]
偶然の出会いからわけありの軍艦に配属されることになった軍人・ロディア(男装の麗人)とその仲間たちが活躍する海軍出世物語、第5巻&完結巻。発売直後に読了していたんですが、感想書くの忘れてたので(殴)
感想。ロディアさんは最後まで男前なヒーローだった。いや、ランセとのやりとりとか、乙女な面もありましたけどね。最初に出てくる感想は「男前な人だなぁ……」に落ち着くという。あとは、アルデアが素敵すぎた。しかし、後日談的記述は……そういうことになるのも、また彼らしいのかなぁ。その他、カロルやキニス、ルーナ・ノアたちレーン号の面々やこれまで物語を彩ってきた人々にもそれぞれ見せ場があったのがよかったです。
物語全体を見れば、ロディアとランセとの関係やら旧神との戦いの行方やら、その辺だーっとまとめて一応の大団円にまとまった感じ。いろいろととりこぼしというかかっとばされてた部分もあったので、正直、もう1~2冊ぐらいかけて丁寧に書いてほしかったなぁと思わなくもない。まぁ、変に引き延ばすこともなくコンパクトに収まったのも悪くはないとも思うんですけどねー。うーん、このあたりは難しいなぁ。
あとがきにもあったように、この戦いが終わった後もまだまだ彼らの人生は続くわけで。その後、彼らがどんな人生を歩んだのか――後日談の僅かな記述からいろいろと妄想を膨らませてしまいますね。とりあえず、これまで苦労した分、皆幸せになるといいよ。
『源氏 物の怪語り』[渡瀬草一郎/メディアワークス文庫]
現在電撃文庫で「輪環の魔導師」シリーズ刊行中の渡瀬さんの、読み切り新作。日本文学史上にその名を残す、源氏物語の作者・紫式部(藤式部)が関わることになった、四人の歌人と四季を巡る四つの物語です。
作品の雰囲気としては「陰陽ノ京」に近い作品でした。むしろ、あれに輪をかけて地味だった気も。一応タイトルに「物の怪」の文字はあるものの、実際に話に絡んでくるのは物の怪という言葉では大仰に感じてしまうような怪異――それこそ、人の心にある不安やらなにやらが形になって現れたモノだったし。そういった怪異に、藤式部が娘に憑いた亡き姉に導かれるなどして向かい合うという展開の短編集。しっとり静かで味わい深い、素敵な雰囲気の作品でした。
しかし、そんな雰囲気の作品なのに、登場人物はさりげに豪華だったなぁ。中心となる藤式部をはじめ、伊勢大輔や和泉式部、中宮彰子や藤原道長などなど、当時に活躍した人たちがさらりと、脚色されすぎることもなく当然に「そこにいる」人として登場してくるのが良い感じでした。あと、「陰陽ノ京」好きとしては、あちらで登場した人たちの名前がちらりと出てきたのは嬉しいファンサービスでしたね。とりあえず吉平さんは奥さんについて詳しく説明をですね……(略)
『乙女ゲーの攻略対象になりました…。』[秋目人/電撃文庫]
昨年メディアワークス文庫から発売された『騙王』の作者さんの新作。『騙王』が普通に面白かったのと、乙女ゲーマー的にどんな内容なのかと気になったので購入。
ざっくりしたあらすじは、何の因果か乙女ゲームの世界に放り込まれた主人公。前世?の記憶によれば自分が該当するキャラは個別ルートに入ると高確率で死亡してしまう!というわけで、ヒロインのアタックをなんとか回避しようと奮闘する主人公・湊と彼にアタックを仕掛けてくる美少女たちの繰り広げる一風変わったラブコメディ、という感じ。
とりあえず最初に一言言うなら、乙女ゲーな感じは全くしなかったです。なんだろう、もしもこのゲームが実在していたら普通に面白そうかなぁとは思うんですが……攻略対象視点(しかもメタ的な知識持ち)である上に主人公以外の男キャラの影が薄すぎたりで乙女ゲームな雰囲気がないよ!という。加えて、主人公から見てメインヒロイン(メタ視点でいうプレイヤーキャラ)のライバルな女の子も数名登場してくるんですが、その全員がなんだかんだと主人公と親しくなっていくんで(一応地の文で他の男キャラとも親密度あがってるっぽい描写はあるけどそれらしいところは作中では見えない)、それ普通にギャルゲーですよね?と言いたくなった。ライバルキャラが存在するゲームとしては、とき○モGS(初代&2)やア○ジェあたりがぱっと思いつくけど、各ヒロインにスタート時点でお目当てキャラがいたり完璧ランダムだったりだしなー。どうでもいいけど、GSで狙ってるキャラ以外の男キャラがアタック掛けてくるのが心底うざくて、ライバルキャラの恋を成就させることはできないのか!とたまにコントローラー投げてたぐらいの人間としては、全員主人公狙ってくるってもう悪夢としか思えなかった……。
そんなわけで乙女ゲーである必然性は残念ながら個人的には全く感じられなかったのですが、毛色の変わった学園ラブコメと思えば普通に面白かったかなー。つーか、下手に乙女ゲー世界にしなくても、いっそ主人公がヒロインから逃げまくるのは、未来予知能力があるからとかでもよかったんじゃ……と思ったりもした。それはそれでベタだけど。
次巻はすでに執筆中らしいですが、どんな展開になるのやら。男キャラももう少し頑張ってくれるといいなー。あと、主人公君は生存模索するのは仕方ないとしてもう少しそれらしいイベントがあるといいなぁ。