もう1月も二週間近く経ってるとか……いやはや、時間がたつのは早いですね(遠い目)
そんなわけで(?)、いまさらですが明けましておめでとうございます。
今年ものんびりマイペースに更新していこうと思いますので、よろしくお願いします。
とりあえず、月1回ぐらい更新するようにしたいなあ。←目標が低い
『カーリー 3.孵化する恋と帝国の終焉』[高殿円/講談社文庫]
第二次大戦期のインドを舞台にした、世界名作劇場風歴史物語第3巻。ファミ通文庫から講談社文庫に移籍し、8年ぶりの新刊発売です。
これまでよりも、歴史オタク的にとてもとても楽しい内容でした(至福) とりあえず序盤、2巻を読んだ時にひとことも言及がない!とひとり嘆いていたアンベードカル博士が登場してものすごくテンションがあがりました。その他にも、随所でインドの複雑な歴史と制度、そして世界情勢を織り交ぜつつ、あくまで「シャーロットの物語」として読ませるものになっているのが良かったと思います。
歴史オタク的語りを始めるときりがないのでシャーロットの話に視点を移すと。カーリー、あるいは異父弟かもしれない少年との苦い別れから4年。女学院が閉鎖されたのち、インドへの想いを抱きつつオックスフォード大学に進んだシャーロットは、カプールタラ藩国の王子ル・パオンとの出会いをきっかけに、とんでもない方法でインドへ渡ることに――という展開。戦争中のまだ安心できない情勢の中、かつての学友たちとの絆が断たれていたいのは素直に良かったと思いました。ル・パオンは今のところ政治に興味のない人物風に描かれてはいますが、やっぱり何か企んでるんじゃないかというが拭えない……逆に、ほんとうに最後までそれで行ったら感心すると思います、はい。カーリーは出番は少なかったけれど、美味しいところをさらっていくなあ、と。それから今回若干描写が増えたシャーロットの家族。こちらもいろいろとありそうですね。
さて、ラスト付近のあおりから考えて、次はいよいよ……な感じ。既に定まった歴史の中で、シャーロットをはじめとする登場人物たちの想いが、未来がどうなっていくのか。続きが読める日が、とても楽しみです。
『テスタメントシュピーゲル 2』kindle連載第5~6回[冲方丁]
「テスタメントシュピーゲル」kindle連載5~6回目の感想です。気をつけてはいますが、ネタバレ注意。
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『ストレンジムーン3 夢達が眠る宝石箱』[渡瀬草一郎/電撃文庫]
未知の存在・迷宮神群の影響を受け、本人が望んだか否かは関係なく異能を得た人々が織りなす物語「ストレンジムーン」3巻目にして迷宮神群リコルドリクと「皇帝」ブロスペクトを巡るエピソードの完結。
感想:だいたいエスハのせいだった。←身も蓋もない結論。別の世界から合流した従者の能力で傍迷惑度が上昇したエスハの本領発揮というべきなのか何なのか……。まあ、彼のちょっかいを発端に起きた今回の事件、どうなることかと思いきや案外あっけなく収束した印象。いやまあ、あっけなくというには被害は甚大だったけど、終盤の展開が急ぎ足だったからかそんな印象が強くて。あと、「皇帝」側についた友人や皓月も扱いが少しもったいなかったような気がしました。
一方、旧作組の登場は素直にうれしかったですね。山ノ内さんもカーマイン卿もお元気そうでなにより。フェルディナンは、あえてそうしているのかいまいちツメが甘いのが相変わらずだなあ、と(笑) ちなみにくろとら君の正体は半分だけ予想が当たりました。……いやだって、さすがに(以下自主規制)だとは思わなかったし。
エピソードは一区切りとなっていますが、大事な人を取り戻すために迷わずエスハの誘いにも乗ろうとしたモニカの今後や回収されていない詐欺師の石の行方など、続編があってもおかしくないような結末でもあり。また迷宮神群を巡る物語が読めることを期待しています。
『王女コクランと願いの悪魔』[入江君人/富士見L文庫]
表紙に惹かれて手にとった一冊。「どんな願いでもひとつだけ叶える」悪魔と、願いを持たない王女コクラン。ふたりが織りなす、どこか寓話あるいは舞台劇を思わせる雰囲気の、実に素敵な物語でした。
出会いからいささか感覚のずれた、それ故に軽妙なふたりの会話から始まって、序盤は基本的には明るくコミカルな雰囲気。王が老齢であるために王女たちの学舎のような扱いになっている後宮で繰り広げられる日々は、歪さを抱えながらも楽しげで、読んでいて楽しかったです。
やがて、とある出来事をきっかけにコクランと悪魔は互いに親愛の情を抱くようになっていくのですが……ここでコクランの抱える「事情」が彼女を追い込んでいくことに。次々と明かされる秘密と畳み掛けるような展開にハラハラしどおし。その中で語られる、コクランがただひとつ欲していたもの。彼女のために悲しみ憤り、己の存在を危うくしてでもその力を振るおうとする悪魔の想い。それぞれに胸に迫るものがあって、涙が滲みました。
そして、迎えたラスト。コクランを取り巻く環境は変わっていないですし、これからも苦難は絶えないと思うのですが……一方で、それでもきっと彼らは幸せになるだろうと、不思議とそう思うことができる、奇妙に後味の良い結末でした。