『Y十M -柳生忍法帖- 5』[山田風太郎(原作)・せがわまさき/ヤングマガジンKCスペシャル]

そういや今月発売だったな、というわけで遅ればせながら購入。立場の逆転が続く花地獄&水の墓場での攻防から31話から会津への旅路が始まった40話まで収録されてます。

今回印象的だった場面は、沢庵和尚の静かな「喝」ですね。あれで、文字通り死に物狂いで疾駆していただろう天丸を嘘のように宥めてしまうあたり、この和尚も只者ではないと思わされます。……そんなやや厳粛な気分もその後に登場した明成の正室登場で吹っ飛んでしまったのは、我ながらどうなのだろう。え、原作では正室(+会話で名前が出てきただけの息子)は少なくとも登場はしてませんですよね。側室の印象が強烈過ぎて私が忘れてるだけとかいうオチじゃないよなぁ。
ああそれから具足が討たれる一連の場面はいろんな意味で面白かったです。相手の油断が多分にあったとはいえ、それでもああいう状況に持っていくあたりは特訓の成果が出てるなーと素直に思います。それにもまして、駄目駄目すぎる具足に笑えてしまうわけですが。

それにしても、たとえ出番は少しでも千姫様はやっぱり迫力満点だ……。

作品名 : Y十M -柳生忍法帖- 5 【bk1】
著者名 : 山田風太郎(原作)・せがわまさき
出版社 : 講談社
ISBN : 4-06-361482-4
発行年月 : 2006.10

11月の新刊購入予定。

以下、各情報サイトをざっと巡回した結果等から、購入がほぼ確定した分。買い忘れ防止のためメモ。

・角川ビーンズ文庫
『オペラ・エリーゾ 暗き楽園の設計者』:栗原ちひろ

・講談社X文庫ホワイトハート
『繙け、闇照らす智の書 幻獣降臨譚』:本宮ことは

・集英社コバルト文庫
『風の王国 臥虎の森』:毛利志生子

・新書館ウィングス文庫
『宝印の騎士』:西城由良

・富士見ミステリー文庫
『タクティカル・ジャッジメント9 被告人・山鹿善行』:師走トオル

・ハヤカワ文庫JA
『マルドゥック・ヴェロシティ1~3』:冲方丁

・GA文庫
『お隣の魔法使い 不思議は二人の使い魔』:篠崎砂美

・富士見ファンタジア文庫
『銀月のソルトレージュ ひとつめの虚言』:枯野瑛

・MF文庫J
『銃姫8』:高殿円

・その他
『琥珀枕』[森福都/光文社文庫]
『水滸伝 2』[北方謙三/集英社文庫]
『狐笛のかなた』[上橋菜穂子/新潮文庫]
『ねこのばば』[畠中恵/新潮文庫]
『きつねのはなし』[森見登美彦/新潮社]
『僕僕先生』[仁木英之/新潮社]
『闇鏡』[堀川アサコ/新潮社]
『天王船』[宇月原晴明/中公文庫]
『天使が開けた密室』[谷原秋桜子/創元推理文庫]
『アンノウン UNKNOWN』[古処誠二/文春文庫]

宇月原氏の『天王船』は新作? それとも『黎明に叛くもの』新書版の外伝4編をまとめたものかな? 黎明外伝なら、+αの書下ろしがあればうれしいのだけど、どうだろう。
他にも気になるタイトルが何作かあるけど、公式やらでもう少し情報でてから判断します。

『春に来る鬼 骨董店「蜻蛉」随縁録』[日向真幸来/B’s-LOG文庫]

過疎の進む愛知県のとある村。無形文化遺産にも指定されている奇祭「天狗の鬼退治」を間近に控え、村は久々に沸き立っていた。天狗役となったのは、買付け交渉で知人宅を訪れていた骨董店主見習いの大学生・辻屋祥一郎。一方、主人公であるお多福役に選ばれたのは、地元の高校生・香坂瑞穂。2年前にお多福役を引き受けた女性が失踪したことに怯える瑞穂は役目を引き受けることに抵抗するが、対面した祥一郎とその友人の淳之介に影響され、祭りに参加することに。

 少女向けレーベルでは久々の新規参入組。公式の紹介やらを読む限り、とりあえずBLではなさそうだったので購入してみました。この作者さんは、以前にソノラマ文庫で作品を発表されていた方ですね。

 感想を一言で言えば、無難に面白かったというところ。ただ、あらすじからもっと伝奇色の強い作品を期待していたので勝手に拍子抜けしてしまったり、途中で挿入された祭りの元になった戦国期の話は、まぁこれはこれで面白いけど実は事件に直接関係ないようなというかここで挿入する意味あるの?とちょっと思ったりはしましたが。
 伝奇じゃなければ、公式で「フォークロア・ミステリー」と宣伝されているとおりなのかといえば、これもまた微妙な感じで。……まぁ、1巻目ということでどうしても主要登場人物紹介編といった趣になりますし、この点は仕方がないのかも。登場人物にはなかなかに個性的な面々が揃っていたので、続刊が出て彼らがもっと積極的に絡んでくるようになればもっと面白くなっていきそうですしねー。

 そんなわけで、ひとまず続刊が出ることを祈っておきます。

作品名 : 春に来る鬼 骨董店「蜻蛉」随縁録
    【 amazon
著者名 : 日向真幸来
出版社 : ビーズログ文庫(エンターブレイン)
ISBN  : 978-4-7577-3013-7
発行日 : 2006/10/14

『EDGE』[とみなが貴和/講談社文庫]

 先月ホワイトハートにてシリーズ全5巻が完結した「EDGE」シリーズ、満を持してというべきか講談社文庫で新装版が発売。よく考えたら1巻と2巻は感想を書いてなかったし、せっかくの機会なので宣伝を兼ねて。
 ちなみにこのシリーズ、主人公である心理捜査官・大滝錬摩とその相棒で尋常でないレベルの超能力者・藤崎宗一郎(但し、過去の怪我の後遺症で記憶を全て失っているのは勿論、精神年齢も大幅に退行。1巻時点では幼児並)の関係の変化などはあるものの、話そのものは1話完結形式なので、とりあえずこの巻を読んであうあわないを判断されるのもいいのではないかと。

 さて、記念すべきシリーズ1巻目。この話で錬摩が追うのは、マスコミによって「黄昏の爆弾魔(ラグナロク・ボマー)」の名が与えられた犯人。その呼び名が示すとおり、黄昏時に東京タワーや都庁などの高層建築物を狙った連続爆破事件を引き起こすこの犯人。FBI仕込のプロファイリングを駆使して犯人の姿に迫っていく錬摩だが、捜査中の偶然から思わぬ事態が引き起こされ……という展開。改めて読み返すと、事件の規模としてはこの「黄昏の爆弾魔」事件が一番大きかったのだなーと、なんとなくしみじみ。
 このシリーズ最大魅力が、犯人側の心理描写。そもそもが『羊たちの沈黙』に着想を得た作品であるためか、これがとにかく秀逸なのです。今回の事件を引き起こした「黄昏の爆弾魔」、彼は特筆するほど異常な性癖の持ち主なわけでもなければ悲惨な人生を歩いてきたわけでもない、ある意味どこにでもいる普通の人。しかし、日々の鬱屈から精神の歪さが増大していった結果、境界線を踏み外してしまった、本当にただそれだけのことなのだと、彼の視点から描かれる日常描写を読むにつれて深く納得してしまうというか。彼の心とそこに巣食っている狂気にこちらまで同調させられていく、そんな錯覚を覚えてしまうなほど丹念な描写には息苦しさすら覚えてしまいます。そして、そこまで彼の心理を理解させられてしまうからこそ、全てが終わったあとの錬摩との会話で彼が洩らした一連の言葉に、なんともいえないやりきれなさと哀しさを覚えてしまうのですよねー……。

 解説によれば、既に2巻も2007年1月に発売が予定されているそうで。まずは順調に5巻まで発売される事を祈ります。……そして、『セレーネ・セイレーン』の続編かもしくは完全新作が3年以内には読めますようにとドサクサ紛れに祈っておきます。

作品名 : EDGE
    【 amazon
著者名 : とみなが貴和
出版社 : 講談社文庫(講談社)
ISBN  : 978-4-06-275537-5
発行日 : 2006/10/14

暫定的に移転。

まだ契約期間残ってるけど思うところあって、レンタルサーバーを移転することにしました。

……いや、これまで借りてたスペースに大きな不満があったわけではないのですが、ここしばらくサーバーの不調が続いておりまして。
特にWordPressを導入してからはDBへの接続が上手くいかないのか、せっせと書いた記事が反映されずに消えたりとかありましてねぇ(遠い目)

そんなわけで数年ぶりにお引越ししてみたわけですが、一応まだ暫定移転ということで。
しばらくここのサーバーの動作状況などを見てから、本格的に移転するかどうか判断しようと思います。