『煉獄のエスクードARCHIVES だけど綺麗なものは天国に行けない』[貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫]

 人類と魔族の「扉」を巡る攻防を描く「煉獄のエスクード」、今回は初の短編集。本編で出番の少ないレイニーの登場率が高めになってます。

 各作品とも、相変わらず奇をてらったものはなくオーソドックスな作りながら普通に面白い、という感想。やや異色なのは最終話の「本日快晴」。作品世界から浮いてるということもなくむしろちゃんと馴染んでいるものの、それでも他の作品に比べるとハードボイルド色の強く出ている作品で。それもそのはず、あとがきによれば、もともと「探偵真木」用に用意されていたプロットをエスクード用に作り直した作品だったとのこと。エスクード版のこの話も良かったですが、元のプロットではどんな話だったのか、そちらも是非読んでみたいなーと思いました。あと気に入ったのは、表題作にもなっている「だけど綺麗なものは天国に行けない」。ネタそのものは序盤で見当がつきましたが、それでも最後が切なかった……。

 次巻は長編4巻になるとのこと。一体どんな展開が待っているのか、楽しみです。

作品名 : 煉獄のエスクードARCHIVES だけど綺麗なものは天国に行けない
    【 amazon , BOOKWALKER
著者名 : 貴子潤一郎
出版社 : 富士見ファンタジア文庫(富士見書房)
ISBN  : 978-4-8291-1869-6
発行日 : 2006/10

『鋼殻のレギオスIV コンフィデンシャル・コール』[雨木シュウスケ/富士見ファンタジア文庫J]

 隔月刊行期間は終わったものの、あまり間を置かずに発売となった「レギオス」シリーズ第4巻。

 今回は小隊メンバーの一人・シャーニッドの過去に焦点を当てた話、と見せかけて、例によってレイフォンの悩みも深く絡んできたり、今後の展開に繋がっていきそうな設定が出てきたりした巻でした。が、なんというか、あれもこれもと詰め込みすぎで微妙に散漫な印象をうけてしまったり。つーか、もうちょっとシャーニッド中心に話が展開してくれれば良かったのになー。過去の仲間との誓いや関係にけじめをつけようとするところなど個々の描写は良かったのに、美味しいところはレイフォンやニーナに持っていかれたような気がする……。
 それにしても、(精神的な面はともかく)レイフォンの最強度がさらに上昇したような気がするのは気のせいなのだろうか。

 さて、因縁が出来た傭兵団との今後の絡みや「廃貴族」の謎、それからリーリンがツェルニに来る可能性も浮上したことで一波乱が起こりそうな恋模様など、いろいろと先の展開が楽しみです。

作品名 : 鋼殻のレギオスIV コンフィデンシャル・コール
    【 amazon , BOOKWALKER
著者名 : 雨木シュウスケ
出版社 : 富士見ファンタジア文庫(富士見書房)
ISBN  : 978-4-8291-1871-9
発行日 : 2006/10

予定が狂う。

週末に読もうと思っていた本がまだ到着しないので、せっかくの休日なのに時間をもてあまし気味。
美容院の予約も明日にしちゃったしなぁ。
仕方がないので、例によって例の如く散らかりつつある部屋の掃除と来月の簿記検定の勉強でもしようかな(←むしろそれを最優先でやりなさい)

そういうわけで掃除に取り掛かったら、姉からSOSコール。新しく買ったプリンタが上手く動かないから見て欲しいとのこと。
電話で日給交渉を済ませ、姉の家へ。それほどてこずることなくあっさり作業終了。
…………したまではよかったのですが。
「これも上手く動いてない」「このプログラムも動作が」と次から次へと言いはじめるのは止めませんかおねーさん。
結局、なんだかんだとやってたら半日仕事になってしまいました(疲)

『戦塵外史 野を馳せる風のごとく』[花田一三六/GA文庫]

エイジェル王国の侵攻を受け、一つの国が地図上から姿を消した。国の名はガルア公国。皇族で唯一生き残った皇女フィアナは、カルディア帝国皇帝セヴェロスに謁見し、挙兵を願う。曰く、「あの侵略者に一矢報いてやりたい」と。「時期尚早」とその嘆願を切り捨てたセヴェロスだが、フィアナの言葉は一人の男の好奇心を動かした。2ヶ月前にカルディアに併呑されたアバール大公国の世子で、今はカルディアの傘下にある武人、ダリウス。「ひとつ派手にやろうじゃないか!」 かくして前代未聞の、たった5人による国盗りが幕を開けるのだった。

 以前、角川スニーカー文庫で発売されていた作品の復刊。ファンの間で通称「大陸」シリーズと呼ばれている作品群の一つ。

 影響を受けている作家やら作品やら人物やらは分かりやすいのですが、「面白いからまぁいいか」と思えるあたり、若さゆえの勢いというのも馬鹿に出来ないものだよなぁ、となんとなくしみじみ(「黎明」はそういう意味では個人的にかなりがっかりな作品だったもので)
 そんな呟きはさておき。架空世界を舞台にした歴史物語は珍しいようであまり珍しくもないですが、この作品の場合は文体も手伝って全体的にかなり硬派な印象を受けます。そのわりに、(魔法や神秘といったもののない世界にもかかわらず)たった5人で小国を奪い返すというかなり無茶なことをやってくれるわけですが。そんな無茶も、「この連中ならやっちゃいそうだなぁ」と妙に納得できてしまうというか。主人公のダリウスは別格にするにしても、彼の内縁の妻アスティアや従者のキルスとラザークも一流以上の腕前だし。また、当然のことながら正面からぶつかるのではなくいろいろ搦め手からも攻めていくわけで。まぁ、普通に考えて相手をするには非常に嫌な連中で、そんな連中を相手にすることになったエイジェル王国からは「疫病神のごとく嫌われていた」というのも、また納得できる話です。

 さて、あとがきによれば他2作品の復刊は確定し、売れ行き次第で単行本未収録の短編集も出るそうで。未収録短編で読み直したい作品があるので、短編集が出る程度には売れるといいなーとひっそり呟いておきます。

作品名 : 戦塵外史 野を馳せる風のごとく
    【 amazon , BOOKWALKER
著者名 : 花田一三六
出版社 : GA文庫(ソフトバンククリエイティブ)
ISBN  : 978-4-7973-3776-1
発行日 : 2006/10/12

富士ミスの5周年記念冊子。

締切ギリギリに出したので間に合ったかなーと思ってたのですが、無事届きました。

これのために申し込んだといっても過言ではない「Dクラッカーズ」の書き下ろし短編は、例によって梓と景の小学校時代の話。
ですが、千絵や水原、甲斐に茜、おまけに3Bも出てきたりとファンサービス満点。嗚呼、これでキメリエスも出てくれればなぁ(←それはいくらなんでも無理だろう)
ともあれ、久しぶりにこの面々に会えて嬉しかったですねー。

あと、骸惚先生の書き下ろしも良かったです。シリーズ終了から5年後、少し大人になった發子視点で語られるあるエピソード。
相変わらずの雰囲気でとても楽しく読んだのですが、最後はちょっと切ない気分になってしまいましたねぇ(しみじみ)