なにそれ美味しいの? というスケジュールに溜息が。(←連休中の休みが1日だけの人)
……嗚呼、カレンダー通りの勤務ができる職場に転職したい。来年か再来年ぐらいには。
『火鳳燎原(台湾版) 30』[陳某/東立出版集團有限公司]
火鳳燎原台湾版30巻。まだまだ下?の戦いが続きます。
読後の第一声は、「……あれ、まだ呂布が退場してない」でした(酷) いや、29巻の予告では、この巻で退場するような文句が躍っていたので、てっきりそうなるんだと思い込んでいたのですが。
それ以外では、少なくともこの戦いに関しては曹操陣営が完璧に悪役だなぁと。冒頭の小東西や高順の奮戦の場面で、つくづくと実感。つーか、小東西絡みは……酷いよえぐいよ、あんな健気な子をー。乱戦ともなればああいうことも仕方がないかもしれませんが、でもやっぱりさぁ……(涙)
そんなこんなで、すっかり悪役な曹操陣営と逆に、呂布陣営は完全に主役状態(……あれ、そういやこの巻って、本来の主役二人の出番がなかったような) 名場面も多いし、揃いも揃ってみんな格好良すぎ。しかし、もはやとことんまで追い詰められていることには違いないわけで……彼らが格好良ければ格好良いほど、切なさも倍増。
さて、今のペースだとなんだかんだで呂布の退場まであと2~3巻は余裕でかかりそうな気がしますが(笑……っていいのか?)、次巻ではどこまで話が進むのか。31巻が楽しみです。
『地の果ての獄(下) 山田風太郎明治小説全集6』[山田風太郎/ちくま文庫]
山田風太郎明治小説全集6巻目。5巻から続く表題作「地の果ての獄」後編他、「斬奸状は馬車に乗って」、「東京南町奉行」、「首の座」、「切腹禁止令」、「おれは不知火」の5作品を収録。
舞台は樺戸から空知集治監に移り、有馬も必然的にそこに収監されている囚人たちの事情に接することに。樺戸よりも政治犯・思想犯が多いというだけあって、当然そういう向きの話も少なからず話の口に上るのですが、特に秩父関係の絡みが多かったかな。……もともと明治ものは「敗者の物語」あるいは「英雄になれなかった人々の物語」という側面を持つ作品が多いですが、それにしてもなんとなくやるせなくなります。
そんなこんなでこちらでもいくつか事件が持ち上がる中、とある事情で空知に滞在していた岩村県令の陰謀によって投獄されてしまった原教誨師。明日にも処刑されてしまう(こういう無茶がまかり通るところが、なんというか、時代だよなぁ……としみじみ思う)彼を救うため、有馬と町医者・独休庵らが「援軍」を呼ぶために北海道の大雪原で大胆無謀な作戦を決行し、なんとか到着した樺戸では西部劇さながらの決闘まで起きて……と、このあたりはまさに怒涛の展開。で、再び空知に戻ろうとしたところでまた問題が発生し、さてこれはどう乗り切るのかと思ったら……それはありですかー!と思いっきりツッコミを入れたくなる解決法が用意されていて、驚くやら呆れるやら。いや、確かにずっと伏線は張ってあったけど……まぁでも、結局は山風だしなぁと何となく納得してしまったような(苦笑) えーと、まぁとにかく終盤の「仕返し」はニヤリとできるし、登場人物同士の余韻の残る別れや有馬の性格も手伝って、読後感は悪くない一作です。
その他収録されている作品は、短編ながらも読み応え抜群。どの作品も、世間や人間そのものの不合理さをときに滑稽にしかし鋭く描きだしたあとに待ちかまえている、皮肉なオチがなんとも効果的。個人的には、「東京南町奉行」が特に好きですねー。明治となり「東京」となった江戸に戻ったある老人が主役(名前は最後のほうまで伏せられているけど、分かる人なら最初のヒントで分かる) 旧時代を懐かしみ新時代を嘆く頑固な老人を通して描かれる、時代の変化(時流に適応できた、あるいは適応できなかった人々の姿を含めた)が実に巧いと思うのです。最後の彼の行動は、一見矛盾しているようで矛盾していない。しかし、それがもたらした結末は……やっぱり、皮肉としか言いようがないですよね……。
『地の果ての獄(上) 山田風太郎明治小説全集5』[山田風太郎/ちくま文庫]
山田風太郎明治小説全集5巻目。形式的には連作短編でもあり同時に長編でもあり。ちなみに、作者自己評価がほぼ全てAとなっている明治小説群の中で、唯一のBだったりする。(中編では「明治かげろう俥」がCだけど、作者的にあれは時代小説の範疇にあったらしいので、どう捉えるべきかちょっと悩むところ)
主役格は、北海道月形の樺戸集治監に看守として着任した青年・有馬四郎助。最初は囚人を同じ人間と捉えていなかった彼が、囚人や看守たちの過去が現在の状況につながり、監獄の内外で様々な事件が起きていくのを目の当たりにしていく、というのが大枠のあらすじになるでしょうか。『明治十手架』で主役級として活躍した原胤昭も、出番はそう多くありませんが有馬や囚人たちに大きな影響を与える重要な役どころで登場。
他の明治物とおなじく、実在の人物のカメオ出演や、実際に起きた明治初期の動乱や事件が虚実融合して物語に取り入れられている様が楽しい。さらに、周囲の環境・状況や複雑怪奇な時代の流れに巻き込まれるなどして服役する身となった囚人(普通に悪党なのもいますが)、けして善人ではない看守たちの絡みが織りなす物語とその結末には、一言で言い表せない人間の多面性や運命の皮肉さが感じられて、ただ面白いとしかいいようがないですね。作中に登場するある人物は、樺戸を「人間の運命の吹きだまり」と評していましたが、言いえて妙。
長編としては、有馬の出身や西郷の暗部など、明治という世の影で犠牲となった、あるいは闇に葬られることになった人々や出来事がゆるやかに繋がりを見せたり、上巻終盤では牢名主的存在である牢屋小僧の持つ不可思議な技能も明かされるなど、さまざまな仕掛けが見え隠れ。これがどういう風に収束していくのかは、まぁお楽しみで。
さて、書類を届ける名目で空知集治監に出向いた有馬が、今度はその場所でどのような事件を目にすることになるのか。続きは6巻収録部分で。
『マーベラス・ツインズ3 双子の運命』[古龍/GAMECITY文庫]
『絶代雙驕』邦訳第3巻。今回収録されているのは、双子の出生から悪人谷での小魚児の成長過程。原書では冒頭部分の、いわば序章に当たるあたりですね。……ちなみにどうでもいい情報ですが、原書は全127章構成で、41章までをほぼ消化済み。つまり、邦訳版は単純計算であと6冊ぐらいになるのかな?
感想。燕大侠が格好良くてほれぼれしました。この一冊は、ほとんどこの人が主役状態だよなーと思った。あと、後半に天下の悪餓鬼・小魚児の育て方実践講座もあり。まーなんというか、ああいう育て方されたら、そりゃああいう子になるよなぁと妙に納得。で、小魚児の成長過程ということで、当然彼の育ての親となる十大悪人の5人が登場するわけですが。とりあえず、みんな個性が強いなぁと改めて思いました(←あれを個性の一言ですませるな) 彼らの燕大侠への仕打ちは、彼らなりの立場や言い分があるとしても正直許せないものがあるんですが、曲がりなりにも小魚児の育ての親だし、その接し方とか見てるとなんとなく憎みきれないんですよねぇ……それに第一(以下今後のネタばれにつき自粛)ですし。
それにしても、原書と構成変えた理由はやっぱりよくわからない。この部分、2巻までの部分にかかる前フリも結構あるのに。
さて、次は2巻の続き。青年に成長した双子に、一体どのような運命が待っているのか。あの人やこの人の再登場はもちろん、未だ出番待ちの人たちの顔見せも楽しみにしつつ、続きを待とうと思います。