雑誌「BOC」で連載されていた作品の文庫化。裏表紙の紹介では長編となってますが、短編集というほうがしっくりくるような。連作短編というには各話の独立性が高めだし。
古今東西の知識全てを収めた図書館。長い旅路の果てに辿り着いた旅人。10本の鎖で縛められた扉を守る乙女像の謎掛けに、旅人は正しく答えて叡智の図書館に至ることができるのか――という大枠の物語の中に、守り人の乙女の出す謎に対する答えを導き出すために旅人が携えた石版が物語を映し出すという形で短編が組み込まれているんですが、各話様々な趣向を凝らした内容で楽しめました。個人的には、第5問と第6問、第7問が好きかなー。
大枠の物語のほうは、徐々に人間味を増していく乙女をかわいいなーと微笑ましい気分でみる一方でこの変化が彼女にとって本当に好ましいものなのかどうかと考えながら読み進めていたら……なるほど、そういう着地点かーという。またいつか、永い時の果てに彼らが邂逅する日がくるといいな、と思う終幕でした。
『薬屋のひとりごと 8』[日向夏/ヒーロー文庫]
中華風架空王朝を舞台にした宮廷ミステリ&ラブコメ、8巻目。
今回はなろう掲載中のWEB版壬氏編1~26を加筆修正した内容。変人軍師・羅漢主催の碁大会がメインなので息抜き的な気分で読んでいたら、最後に不意打ちを喰らった感じ。彼の猫猫に対する感情を否定はしないけど、それはちょっと待てー!と言いたくなるやつだった。いや、猫猫も別に彼を嫌ってはいない(むしろ彼女の基準に照らし合わせればかなり情は移ってるし好意的だけど)とわかってるけど、彼らの立場的にすんなり結ばれるのは難しいだろうと見当もつくけど、まさか変人軍師に使った手の(ある意味で)変形版かつ強硬手段でくるとは……うーん、妙なところで思い切りがいい。彼らの関係にとってこれがひとつの転換点になるのは間違いなさそうですが、この先が楽しみなような不安なような。彼絡み以外でもなんだかんだと人がいいというか信頼されると裏切れない猫猫には頑張ってと言いたくなりましたね……。あと、どうやら「約束」が守れなくなってしまった帝は、うん、ご愁傷様です。
らぶ(?)方面以外では、玉葉后の親族周りや外敵、飛蝗問題など問題がじわりじわりと進行中。次巻以降で本格的にこの辺りの問題に取り組んでいくのだろうけれど、どんな決着が待っているのやら。個人的には今回あからさまに示唆された感がある阿多の現状と小蘭の勤め先が気になってるんだけど、今後関わってくるのかな。
宝塚花組「CASANOVA」を観てきた話。
つい先日、今年初の生観劇で宝塚大劇場に行ってきました。トップ娘役仙名彩世さんの退団公演になるので、取れてよかった……(ポーの一族、MESSIAH&BGと観て、この方好きだなあと思ってた)
以下、さっくり簡単な箇条書き感想。
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『天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3』[小川一水/ハヤカワ文庫JA]
大河SFシリーズ最終章完結編。
冥王斑を持って銀河を席巻するミスチフ=オムニフロラ。太陽系人類が対抗手段として打ち出したのは、新たな「魅力的な種」を生み出すことだったが……という前巻の展開から、あと1冊でどう物語をたたむんだろうと思ったら! ここまできてまたそういうどんでん返しするのー!?と言いたくなるような展開からそれでも諦めないヒトたちの戦いとそれぞれの決着、そこからさらに先へと続いていく歩み、そして、人が抱く願い――と、これでもかというぐらいに1冊にいろいろと詰め込まれていた感じ。しかも、その詰め込み具合がバランスが良くて無理やりまとめた印象はないという。さすがに大局的な視点がやや増量された関係か、個々の物語の結末はご想像におまかせします、なところもあったけれど。
どこを語ってもネタバレになりそうなのですが、とりあえずお気に入りの場面は181p.でのアクリラの名乗りと、292p.でのリリーの宣言ですね。あと、断章九一の先にはどんな世界が広がっているのか、彼らの旅路を見てみたくなります。いつか何らかの形でサブエピソードとして発表してくださったら嬉しいなあ。そして、その名が10巻のサブタイトルにもなっている彼女のエピソードには、PART1で描かれた彼女の親友サイドのことも思い出して、ただ涙しました……
全10章17冊、約10年付き合ったシリーズの完結だけに、本を閉じたときは「ああ、読み終わってしまったんだなあ」と、ちょっとしんみりしつつ、この物語を書ききってくださった作者様に、最大級の感謝を捧げます。
『Cendrillion palikA』プレイ感想メモ。
携帯ゲーム機が今後一択になりそう&それに伴ってネオロマや無双等よく購入してるコーエーも機種移行を進めていきそうなことと、通販サイトのポイントが結構溜まってたので購入したNintendoSwitch。今のところインディーズゲーム中心に遊んでるいるんですが、乙女ゲーム系ではオトメイトが完全新作を出していたので、購入してみました。
システム的には、オトメイトのゲームにしてはわりと快適なほう? ちょっと時間はかかるけど選択肢までスキップもあるのでストレスは比較的少なめ。エンドリストがないのは人によってはマイナス点かも。あ、あとキャラの名前はあえて漢字ver用意せずカタカナだけで良かったんじゃね?と思いました。正直、わかりにくいというかなんというかだし。
ストーリーは、ガラスの呪いがかけられた街・透京に暮らす少女が、ある日出会った自称「魔法使い」に彼女だけがこの呪いを解くことができると告げられ、解呪のため協力者と行動をともにする――というのがおおまかなあらすじ。キャラ紹介が共通2章までで、その後は協力者候補から1人を選んで個別ルートに突入します。だいたい主人公によるカウンセリング恋愛になりますが、互いに惹かれていく過程がわりと丁寧で納得できるし、呪いを解く方法もキャラごとに違うから金太郎飴展開はなし。展開や設定等はふんわりしている部分も多々ありましたが、それがおとぎ話や寓話めいた雰囲気を演出しているようにも思えました(好意的解釈)
以下、キャラ別感想。できるだけネタバレしないようにはしてますが、一部触れてるところはあります。
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