「今度の雪組、歌がテーマのショーらしいから間違いなく楽しめるだろうし、せっかくだから行こうかなー」と軽いノリでチケット確保して、行ってきました宝塚大劇場(ちなみに、縁があって2回観劇) 以下、いつものようにさらっとした感想です。
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『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』[餅月望/TOブックス]
ティアムーン帝国でわがまま姫と蔑まれていた皇女ミーア。革命によって処刑されたはずが、目覚めると8年前――12歳の頃に逆戻りしていた。前世で最期まで自分の側にいたメイドと文官を味方につけ、ギロチン回避のために失敗した過去をやり直す日々が始まった――という幕開けの、歴史改変ファンタジー。「小説家になろう」で連載中のWEB小説の書籍化。
表紙イラストがかわいかったのと軽く楽しめそうなあらすじに興味を惹かれて購入。
いかなる奇跡かやり直しの機会を与えられたミーアが、前世の経験と死の間際まで綴っていた血染めの日記帳(二度目の人生での行動によって内容が変化する)をもとに、ギロチンを回避するべく彼女なりに考えて行動していくのですが、彼女自身は特別優秀というわけではなくどちらかというとちょっとポンコツ気味ですらあるという。で、「我が身の安全第一」が本音の彼女、仇敵はできるだけ遠ざけ、もしもの時の人脈作りに励んでいたら、周囲の深読みや忖度で次々と状況が動いていくことに。その勘違いに対して、地の文でちょいちょい入るツッコミとかが妙に楽しい。
また、主人公のミーアも本質的にそこまで悪い子じゃないし(前世でも考えは足りないし我儘放題だったけど、積極的に民を虐げるほど悪辣ではなかった)、なんだかんだポジティブで憎めなさが程よく良い感じ。その他のミーアの周囲に集まる人達も、前世ではバラバラの立場だった(どころかミーアの処刑を決めた、彼女にとっては仇敵といえる相手もいる)のが、ミーアの行動(とそれを深読みしまくった結果)で今生では親しい関係になっていって。前世ではとりまきはいてもひとりぼっちで狭い場所にいたミーアに友人や仲間ができて、広い世界に接して前回とは異なる人生を(ギロチン回避という大目標は別にしても)楽しんでいる。そういう変化が、お約束ながら良かった。
あとがきをみたところ、2巻までは発売決定している様子。学術都市で青春謳歌中のミーアのやり直し人生がこの先どうなるのか、楽しみです。
『ホテルクラシカル猫番館 横浜山手のパン職人』[小湊悠貴/集英社オレンジ文庫]
同じオレンジ文庫で小料理屋を舞台にした「ゆきうさぎのお品書き」シリーズを展開されている作者さんの新作は、横浜の小さなホテルを舞台にした物語でした。
読了後、「こんなホテルがあったらリフレッシュに泊まってみたいなあ……食事美味しそうだし」と真っ先に思いました(食欲旺盛)
それはさておき、物語の中心となるとなるのは、3年弱勤めたパン屋を師匠と慕っていた店主の急病による閉店でやむなく離職したパン職人の紗良。祖父が勧める結婚を断った彼女は、同じく実家を離れているパティシエである叔父の紹介で横浜・山手にある「ホテル猫番館」の面接を受けることになって……という導入。紗良の他、ホテルの料理長やオーナー親子に焦点を当てた作品が4編収録されています(ちなみに、各話の間にはホテルの看板猫・マダム視点の掌編もあり。) メイン人物となる紗良はいわゆる「良家の子女」ながら、とある出会いをきっかけにパン職人の道を志したという女性。若いながらもしっかりした自分の意志と仕事に対する誇りを持ち、行動する姿は好印象。そんな彼女と接する登場人物たち、それぞれ抱えている屈託は現実離れしたものではないけれど、それ故に当人たちには一笑に付せるものではなく。彼らが作中で悩み考え、時に紗良の真っ直ぐな言葉がほんの少し後押しにもなって一歩を進み出すその過程は素直に応援したくなるし、一山越えたあとの姿には良かったなーとしみじみ。
劇的な展開や盛り上がりはないけれど、優しい気持ちになれる素敵な1冊でした。続編が出たら嬉しいなあ。
舞台「PSYCHO-PASS Virtue and Vice」を観てきた話。
令和最初の観劇で、近未来SFアニメシリーズ「PSYCHO-PASS」のスピンオフ舞台・大阪公演に行ってきました。以下、考察とかは特にないふわっとした感想(ネタバレ有)
あ、ちなみに私のシリーズ履修具合は、アニメは映画含めて全部見てるけどノベライズまでは追ってないレベルです。
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『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 1「case.剥離城アドラ」』[三田誠/角川文庫]
Fateシリーズ派生作のひとつ。Fate/ZEROと同じくTYPE-MOON BOOKS(自費出版)で発売されていたシリーズの、一般流通書籍版。
内容は、第四次聖杯戦争で生き残った少年ウェイバーが、諸々あって「時計塔」の君主(ロード)・エルメロイⅡ世(以下、ロード)となってさらに数年後。第五次聖杯戦争が始まる少し前に、必然として遭遇する様々な魔術的事件を解き明かしていく、広義のミステリ。Fate派生作品としては、他作品が本編と多かれ少なかれ本編と「ずれた」世界の物語とされているのに対して、この作品は同一軸で展開されているのが特徴。
で、この1巻。ロードの内弟子であるグレイを主な語り部として、死去したある魔術師の「遺産」に絡んで発生した事件が展開されていきます。ミステリとしてはまあ、前提条件として魔術が実在する世界ですし読者側に必要な情報・知識が適切に開示されているかといえば首をひねることになってしまいますが、ロードがあれこれと考察する場面等でミステリ気分は問題なく味わえるかと。
Fate他TYPE-MOON作品の一角を担う作品としては、タイトルにもなっているロードだけでなく他作品のキャラの出演や世界設定の補強・掘り下げ等が物語を邪魔しない程よい分量で盛り込まれているので、読んでてニヤリとできます。逆に、そのあたりの情報がまったくない方がどう感じるのかはちょっと気になる。
キャラクターとしては、時間を経ていろいろ変わったところもありつつ、根っこの部分はわりとそのままなロードの姿が実に好み。終盤の「ボク」と「私」が入り混じった一連の語りの場面とかラストのとある人物に返した言葉とか読むと、最終的には……なのが分かっていても彼の夢が叶うことを願いたくなりますね……。あと、事件簿が初登場となるグレイやちょっとだけ登場したロードの義妹ライネスは、あらためて読むとグレイに関しては意外な素性が明らかになったりアドラでの出来事を通して精神的な変化が描かれたりはしたけれど、まだ顔見せ程度で各自の色はさほど出ていない印象。まあ、彼女たち(そしてこの後の巻で登場する面々)については今後のお楽しみということで。
アニメ化が決定している5冊目までは毎月発売されることが決まっているようなので、のんびりシリーズ再読するつもり。自費出版版最終巻も今月発売される予定なので、楽しみにしてます。