宝塚月組「Anna Karenina(アンナ・カレーニナ)」を観た話。

いつも観劇にいくと目で追ってしまう月城かなとさん(私はどうも彼女のお顔が好きらしい)と、友人がひいきにしている海乃美月さんが出演されるということで観たいなーと思ったものの、バウホール(小劇場)公演なんてご用意されるわけはなくチケット戦争に破れてしょんぼりしていたら、まさかの千秋楽ライブビューイング実施。これは観に行くしかないと、なんとか都合をつけて映画館に足を運んだのがもう一週間前の話。いまさらながら、さらっと感想。
なお、宝塚では過去2回同演目が上演されているそうですが、そちらは観たことがありません。

・冒頭、話の中心になる人々を食事に見立てて紹介していくのがなるほどなーという感じ。他人の人生や醜聞も、所詮はその場その時を彩るものにすぎない社交界の無情さがここではっきり示されている。その後の駅でのシーンと併せて、印象的な幕開けでした。
・ヴィロンスキー役の美弥るりかさん。色気が滴るような青年軍人。アンナとの恋を契機に傍から見れば転落していく彼ですが、旧友が最後に漏らしたように彼自身は苦しみも含めて彼女との日々をなによりも輝かしいものとして胸に抱いているし、それは死ぬまで変わらないんだろうと自然と伝わってくる。アンナが世を去って、ようやく恋が愛になった、というか。今回であらためて素敵な役者さんだなーと思ってただけに、次回作で退団されるのが残念です。卒業後もまたお姿を拝見できますように。
・タイトルでもあるアンナ役の海乃美月さん。高級官僚の妻に相応しい貞淑な女性から一転、ヴィロンスキーと恋に落ち自身のすべてを燃やし尽くしていく。彼女の行動に「そこでそれを言っちゃうのか……」「あああちょっとそれは都合良すぎやしないかああああ!?」と内心ツッコミいれまくるのはやむを得ないことと思う。それはさておき、序盤の社交界の中でも模範的とも言える淑女っぷりから破滅の恋にひた走る中盤、そして終盤の諸々の要因が重なって精神の均衡を崩していくまでの変遷が極自然に演じられていて、見ごたえがありました。エリザベートのヴィンディッシュ嬢のときも思ったけど、海乃さんってこういう一癖ある難しそうな役をうまく演じられる方だなあと思う。
・カレーニン役の月城さん。髭。顔がいい。渋かっこいい(語彙消失中) えーと、体面大事なだけの人かと思いきや、競馬場でヴィロンスキーに夢中なアンナの姿をなんとも言えない顔で見つめるところや、スティーバ(アンナの兄)との会話の場面、そしてなにより、最後にヴィロンスキーを見送るすところ等抑えた演技にその時々で抱く心情がにじみ出ていて、行動の端々から彼なりにアンナを愛していることが垣間見える(ただしアンナにはまるで伝わってないし彼女が対話を望んだ時の言葉選びは擁護できないほど壊滅的に駄目だった) 多くの葛藤を経て人間的な大きさを持つに至った人、という印象。
・夢奈瑠音さん演じるコスチャときよら羽龍さん演じるキティの恋の行方は、内容的に重い作中での数少ないオアシスだった。
・社交界の重鎮ベッツィを演じるのは専科の美穂圭子さん。アンナとヴィロンスキーの有様に社交界が眉を顰めるようになっても、否、むしろそうなってからより熱心に彼らを支援し庇護するようだったのは、自身の過去の後悔か何かを彼らに投影しているような感じで。悪意はないのだろうけれど、それだけにどうにもやっかいな人だった。
・個人的には、主役ふたりには理解も共感もできないのだけれど、それはそれとして愛や人生についていろいろと考えてしまう、良質のお芝居でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください