『天外遊戯』[ミズサワヒロ/小学館ルルル文庫]

 昨年ルルル文庫からデビューされた作者さんの新作。デビュー作の『吉原夜伽帳-鬼の見た夢-』が面白かったので、今回も購入してみた。
 仙女の鏡のような外面とは裏腹に、出世を生きがいにしている仙女の翆簾。そんな彼女が西王母へ奉げるために大切に育ててきた仙桃が大妖・崋山に喰べ尽くされてしまう。怒りのあまり翆簾が崋山の住処に乗りこんだことから、思わぬ事態になってしまって――という導入から始まる、中華ファンタジー。

 事前情報ほとんど仕入れないで買ったので、読みはじめてから「これはもしかしなくても西遊記モチーフ!」とテンションがとてもあがりました(それだけでポイント上がるのもどうなのか)
 話としては、桃の盗み食いの代償として地上で千二百の善行を積むことになった崋山とその監視役となった翆簾の世直し道中記その一幕、という体裁。わりと王道展開で、『吉原夜伽帳』ほど雰囲気に惹きこまれることもありませんでしたが(個人的主観)、その分最後までするすると楽しく読めました。しかし、個人的にちょっと残念だったのが、彼らが人界に降りて10年後に遭遇した事件が今回メインの内容だったので、翆簾と崋山の間にすでにそこそこの友好関係が構築できている状況だったことなんですよねー。いや、それはそれで良いと思うんですけど。でもせっかくだから、まだ仲が悪かっただろう頃の凸凹コンビぶりを見てみたかったような気がしなくもない。

 まぁでも、全体的には普通に面白かったです。内容的に読みきりでもよさそうだけど、人気が出たら続けられそうでもあるかなぁ……などとちょっと期待もしつつ、次作を楽しみに待ちたいと思います。

作品名 : 天外遊戯
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著者名 : ミズサワヒロ
出版社 : 小学館ルルル文庫(小学館)
ISBN  : 978-4-09-452216-7
発行日 : 2012/2/24

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