『封殺鬼 帝都万葉』[小学館ルルル文庫/霜島ケイ]

 長編伝奇シリーズ「封殺鬼」、約1年半ぶりの新エピソード。「鵺子ドリ鳴イタ」終了後から1年後の話。あと、携帯でなにかのフェアの時に公開されていた短編も巻末に収録。

 お話全体に昭和初期という時代の持つ特有の暗さこそ付きまとっていますが、そんな背景はさておき志郎と桐子の二人ですよ。(真顔) 桐子が15歳になって、見合い話が持ち込まれるようになって……ということから、それぞれの心に生じる変化がとても美味しゅうございました。特に桐子は、恋愛相談とか志郎への感情に名を与えられて狼狽したりとか、極めつけは最後の異界での志郎とのやりとりが! とてもニヤニヤもので、床ローリングしました。一方、彼らを見守る鬼二人の視線は暖かくもどこか切なく……終幕前に二人が交わしていたあの会話には、ちょっとしんみりしました。
 あと、今回の話に関わることになる幽霊二人がそれぞれ素敵なキャラでした。特に音吉姐さんは、気風の良さと惚れた男への筋の通し方が実に格好いい。この人は惚れるわ……。あと、達磨に取りついた人の好い彼も良かった。彼らが旅立ったあとに咲いた花二輪が、実に粋。

 読み切りのような内容でしたが、折り込みチラシに新章開始と書いてあるから、二人が正式に結婚するまでの話になるのかな。もちろんそれだけでなく、今回登場した不死木の一族や仄めかされる軍の動き等も絡んでくることになるのでしょうが……なんにしろ、この先どんな話が繰り広げられるのか、とても楽しみです。

作品名 : 封殺鬼 帝都万葉
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著者名 : 霜島ケイ
出版社 : 小学館ルルル文庫(小学館)
ISBN  : 978-4-09-452185-6
発行日 : 2011/1/26

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