「パラケルススの娘」最終章・後編。これにてシリーズ完結です。
自らの野望実現に王手をかけた魔術師シモン。もはやこれまでかというときに、サー・マクスウェルが現世に介入し、僅かな猶予が生まれる。そして、遼太郎は大事な家族と友人たちの想いを胸に、最後の戦いへ――という流れ。展開的にはもう王道中の王道というか、9巻ラストのクリスティーナの行動が「ああ」だった時点で、ある意味ラストまでが必然であったような気がしなくもない。しかし、言っても仕方がないことだけど、キリスト教に造詣が深ければまた違った楽しみ方ができたかもなぁ。あと、できれば9巻と続けて空けずに読みたかったなぁ、と思ったり。盛り上がりまくったところで間が空いたので、どうしてもテンションが落ち着いてしまったというか……まぁ、個人の好みですが。
登場人物絡みでは、ここ数巻の恒例行事ながら遼太郎は精神的に成長したなぁ、とつくづく思いました。シリーズ開始当初の頼りなかった少年はどこへやら、だ。あと、バ(略)ことアレックスも、道化た行動を止めてからの成長著しいことこの上なかった。その他、リース警部格好良い!とか、サー・マクスウェル……!とか、ジンジャー……とか、そんな感じ。
「彼」であり「彼女」である人とその従者は、あの後も何かと人の業深さを目の当たりにしながら、それでも飄々と世の中を渡っていくのだろうな、と。そんな姿が、頑固者が歩んできたのだろう道程とともに自然と思い浮かぶ幕引きでした。
シリーズ開始当初は「……なんかこの作家さんにしては軽い……」と思ったものですが、最終巻まで読んだ今となっては、やはり五代さんは五代さんだったと妙に納得したような感じです(笑) うん、面白かったです。