『世界画廊の住人 地下迷宮の物語』[栗原ちひろ/幻狼FANTASIA NOVELS]

 綺麗に終わってるので続編はないだろうなぁ思っていた『世界画廊の住人』、まさかの続編。今回主役となるのは1巻では敵役……というか主人公たちとは立場を異にしていた錬金術師カルヴァス。前回の出来事で世界が「開いた」結果、それまで所属していた深淵派を抜けたカルヴァス。故郷へと足を向けた彼は、そこで奇妙な出来事に巻き込まれ……というのが、今回エピソードのざっとしたあらすじ。

 相変わらず、ちょっと踏み込んで感想を書こうとすると即ネタばれ警報が発令される作品だ……。えーと、ネタバレしない範囲で感想をいうと、基本的に根暗というか余計なことを考え過ぎる性質のカルヴァスが、本人は別に積極的に動いてないのに状況に流されたりなんなりしているうちに、ふと気がついたら故郷の町を侵す異変に対峙する羽目になってるのが面白かったというか。カルヴァスって難儀な性格だけど、根っこのところでは健全(といっていいのか、ちょっと悩むところではある)な人だよなぁ、とか思いつつ読んでました。あと、後半で登場したセツリたちは、それなりに苦労しつつも楽しくやってるようで良かったです。
 ちょっと話に絡んだ感想。今回の話は「絵画」に加えて「物語」もキーワードになっていて、徐々にその演出が見えてくるのがなかなかに興味深かったです。カルヴァス達が「迷宮」を進んでいく様子や最後の「反転」の場面とか、あのあたりの場面が好き。「創造主」との対話は、まだ「上」があるの!?と思ったりした。
 そうそう、「生きている」カルヴァスと「死んでしまった」フラーメアとの対話があったのはなんとなく嬉しかったです。あの二人の奇妙な依存関係が、わりに印象的だったので。「おかしくなるほど絶望しただけ」という一文が、カルヴァスがフラーメアに抱いていた特別な感情(それが愛であるかどうかはさておき)を思わせて、なんだかしんみり。

 今回のエピソードも多少余韻を残しつつもすっきり完結したので、これ以上は続かないかな……とも思いますが、それを言うなら前回もそうだったし。またそのうち、この世界の別の場所を舞台に、別の人を主役にした、別の物語が読めるかも?

作品名 : 世界画廊の住人 地下迷宮の物語
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著者名 : 栗原ちひろ
出版社 : 幻狼FANTASIA NOVELS(幻冬舎)
ISBN  : 978-4-344-81840-8
発行日 : 2009/12/28

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