長編伝奇シリーズ「封殺鬼」。若干14歳にして神島の当主となった少女・桐子をメインに据えた昭和編・「鵺子ドリ鳴イタ」第5巻にしてエピソード完結巻。
物語の背景というか雰囲気に当時の世相が滲んでいるため、どうしてもどんより重い気分にもなりましたが、最後まで期待通り、安定して面白かったです。
それぞれ国を思っているはずなのに、どこかで歪み狂っていく。「人喰い」事件も、その一端が表に出たにすぎないという事実がなんともやりきれなかったです。また、魔人兄妹も。彼らが為した所業は確かに外道の技でそれ自体は処断されるべきだろうことだろうけれど。それでも、魔としては「闇」に受け入れられず、人としては迫害され……というその境遇は、やはりやりきれなかった。どうしようもなかったんだろうけどなぁ……乙夜と真明、それぞれの最期の言葉が切ないです……。
と、そんな感じでシリアスな空気を周囲の人間を道連れにあっさり壊してくる聖と志郎は、実に良い物語の清涼剤でした。ふざけているだけじゃなくて、彼らの中で動かない芯があるから、空気はゆるみつつも話が逸脱したような雰囲気はないしなぁ。あと、いつのまにやらすっかり良い「お友達」な志郎と桐子にニヤニヤした。「ミキさんにカーディガンをもらった時の気持ちに似ている」とか「頭わしゃわしゃ」とか、思わずゴロゴロした。(余談ながら特典CDもとても床ローリングした。素直じゃない桐子がかわいい)
さて、「鵺子ドリ」のエピソードは無事完結しましたが、また新しい「封殺鬼」のエピソードが読めると良いなーと思います。キャンパス版の続きで、オサキちゃんの話みたいな単発の話も読みたいなー。