『プリンセスハーツ ~初恋よ、きみに永遠のさよならをの巻~』[高殿円/小学館ルルル文庫]

 大国パルメニアを征服するという目的のため手を組んだ仮面夫婦と主従の戦いと、関係の変化を描くシリーズ第5巻。エピソードとしては4巻から引き続いて、大国オズマニアとの領土を巡る謀略戦。その結末まで。

 ナンセの新領主の座を誰に与えるか。それぞれ智者同士のジルとオース王子の駆け引きには、ジル側が目をつけたサラミスのとある思惑から生じた「あること」も絡んで、どうなるんだーととてもはらはらしました。そして、ついに大ピンチ!なところで、いかにも武の人らしいやりかたで場の空気を味方につけたルシードの格好良かったこと。ジルが打っていた一手も霞んでしまうほど、その姿は輝いていました。
 あと、「初恋よ、きみに永遠のさよならを」のサブタイトルどおりな展開もあり。今回の騒動が全て終わった後、直接「彼女」に会わず去っていった彼の心も、当然彼が近くにいてくれると思っていただろう「彼女」の心も、どっちも想像するだけで切なかった。あと、オースの秘めた想いは、そっちだったのか、と少し驚きましたが……ケティの癒えることのない痛みと、さりげなく零れおちた呟きも手伝って、彼らも何かが違っていればなぁ、と思うとやはりやりきれない思いでした。

 もう一つの見どころなルシードとジルの関係はというと、確実に互いに対する信頼(+無意識下では愛情)が育っているようでとてもニヤニヤしました。全部が終わった後の二人の会話とかもうね。しかし、あそこで「可愛がりなさい!」とか「調教」とかいう台詞を出してくるジルは天然ボケすぎ。一人で百面相しているルシードがちょっぴり気の毒になりました(笑) そんな感じでほのぼのしていたら、ラスト付近でいろいろ不安になる描写があって……一体この先彼らはどうなるんだとガクブルしてしまいました。

 さて、次はオズマニア王自身との対決となるのか、それとも……? どちらにせよ、続きがとても楽しみです。

作品名 : プリンセスハーツ ~初恋よ、きみに永遠のさよならをの巻~
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著者名 : 高殿円
出版社 : 小学館ルルル文庫(小学館)
ISBN  : 978-4-09-452122-1
発行日 : 2009/07/31

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