須賀しのぶさんの新作は19世紀のオーストリア系ハプスブルグ家で繰り広げられる禁断の愛の物語。
主人公は、某ヅカの歌劇でも有名なエリーザベト、ではなくそのお姑さんにあたる大公妃ゾフィー。……この選出の時点でさすが須賀さんだと思う。なんというか、微妙にマニアックなところを突いてくるよなこの人……。えーと、そんな雑感はともかく内容を要約すると、第二のマリア・テレジアになるのだと理想に燃えて嫁いできた彼女が、婚礼舞踏会で「運命の相手」に出会ったことから始まる心に秘めた愛と葛藤を描いた、王道といえば直球王道な話でした。話そのものも普通に面白かったですが、さらりと読めるわりに当時の世情やらが分かりやすく書かれていて、歴史オタクとしても楽しめました。(このあたりの時代に詳しい人が読んだらどう思うかまでは分からないけど、須賀さんなら考証もしっかりしてるだろうと勝手に信頼)
……どうでもいいけど、相手役のスーパーセレブな昔の少女マンガ風王子様とのやりとりはわりとどうでもよく(酷)、政略結婚相手で最初は疎遠→徐々に信頼&愛情が築かれていくカール大公や辣腕宰相(しかし時代に合わなくなってきている)メッテルニヒとの駆け引きのほうが楽しかった私はやっぱり少数派なのかなーと思ったり思わなかったり。
さて、あとがきによれば次は「アンゲルゼ」の2巻になるとのこと。あのシリーズも勿論先が気になりますが、たまにでもいいからこういう歴史系の作品ももっと書いて欲しいです。そのうち、須賀しのぶヨーロッパ歴史小説集とか出せるぐらいに(笑)