ミステリ方面でしばしば名前を聞く作者氏。前から面白そうかなーと興味は持っていたので、ちょっと作品に手を伸ばしてみた。……けして美味しそうなタイトルに心惹かれたわけではありません。ありませんったら(←説得力がない)
下町のフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台に、客たちが遭遇したちょっとした事件や出来事を、シェフの三舟氏が料理人ならではの知識や着眼点から美味しい料理と共に解きほぐし、お客さんたちも心に残ったわだかまりを解いていく――という日常の謎系のミステリ短編集。扱われる謎はたいそうなものではなく小粒というか地味なものですが、さっくり読めて素直に楽しいミステリでした。舞台となる「パ・マル」の雰囲気と、あるときは小道具に、またあるときは謎の核心となる料理の数々がとても魅力的に描かれているのも好印象に一役買ってます(←食いしん坊)
収録されている7編はそれぞれの味があって面白かったですが、中でも「オッソ・イラティをめぐる不和」と「ぬけがらのカスレ」、それから「割り切れないチョコレート」が気に入りました。それぞれの物語がどういう結末を迎えるのか明言されていませんが、それでもきっとそれぞれの状況から望める限りのハッピーエンドになるだろうと思える幕引きが後味良し。
ああそれにしても、美味しいレストランにコース料理を食べに行きたくなる本だった……。
作品名 : タルト・タタンの夢
著者名 : 近藤史恵
出版社 : 創元クライム・クラブ→創元推理文庫(東京創元社)
ISBN : 978-4-488-01228-1 → 978-4-488-42704-7
発行日 : 2007/10 → 2014/4/28