『ボトルネック』[米澤穂信/新潮社]

2年前に事故死した恋人を弔っていたリョウ。ふと眩暈に襲われ、気づけば「自分が産まれなかった世界」にいた。リョウの世界では生まれてこなかった姉がいるこの世界には、街並や社会に大した違いはない。だが、やはりところどころ違う部分がある。リョウは姉と共に「間違い探し」をすることになるのだが……。

 米澤氏の新作は、ミステリ成分を含む青春小説(甘さなし)、というところでしょうか。

 「姉」であるサキのいる世界とリョウのいる世界の相違を生み出したのは、ほんの少しの行動の差。想像力と行動力に溢れるサキと共に行動するうち、嫌でも見えてくるその差を、淡々と受け止めていたリョウの心中にそれでも積もっていく思い。それがついに表に出てくる終盤の展開が、エグイというか容赦ないなぁ、と。そして、最後の一文が極めつけに後味が悪い。彼のあの思考パターンであの状況になったなら、十中八九後押しされちゃっただろうなぁ……。

 好みではないけれど印象には残る、なんとも苦い話でした。

作品名 : ボトルネック
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著者名 : 米澤穂信
出版社 : 新潮社
ISBN  : 978-4-10-301471-3 → 978-4-10-128781-2
発行日 : 2006/8/30 → 2009/9/29(文庫化)

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