心理捜査官(プロファイラー)・大滝錬摩の事件簿、2年1ヶ月ぶりの第5巻にしてシリーズ最終巻。
4巻終了時点ではかなり痛いエンディングしか想像できなかっただけに、とりあえずハッピーエンドといってもいいエンディングを迎えられたことに一安心、というところでしょうか。ただ、あとがきでも作者氏自身が書かれているように、これまでのシリーズで一番の見所だった犯人側の心理描写は物足りなかったです。最後の事件だけにどれだけのものが読めるだろうとワクワクしていただけに、なんだか拍子抜けしてしまったというか。犯人が抱え込まざるを得なかった不満や絶望、怒り等がまぜこぜになったドロリした深層心理の片鱗はうかがえたものの、あくまで表面部分を掠っただけという印象で。もう少し深くまで踏み込んだ描写があれば違ったでしょうが……個人的にシリーズで最高傑作だと思っている『毒の夏』の犯人の感情を超えなかったのがつくづく惜しい。
登場人物のその後については、まずは主人公である錬摩が過去に固執するのを止め、前向きに歩き出したことになんというか、ほっとした気分になりました。関連して、宗にも(いろんな意味で)おめでとう、と。ああそれにしても、あそこで出てきた「藤崎」はどこまで自分のことを知ってたんでしょうかねぇ……想像すると、ちと切ない。その他の登場人物については……やっぱり、彼女には驚きました、とだけ。あと、これまで思わせぶりに存在を仄めかしていた例の人に関しては、えええ、そんなオチあり?という思いとあー、やっぱりこの作品でファンタジーなのは「藤崎」だけかとなんとなく納得した思いと半々、というところ。あーそうそう、柚留木の扱いがかなり放りっぱなしで終わったことはやや残念でした。やはり思いっきりヘコますか何かの目に遭わせてやって欲しかったですよ。うん。
ともあれシリーズ全5巻、最後まで楽しませていただきました。次回作も気長に待たせていただきたいと思います。