だるだるー。

最近職場でストレス&疲労が溜まりまくってどうしたものか状態。
ただでさえ花粉症で死にかけてるのに、余計な負荷をかけないでほしいよ全く……と呟きつつ仕事してます。
……つーか、当初の予定では今頃退職間近だったはずなのになぁ。おかしい、どこで予定狂ったんだろう(←人に頼られると見捨てておけない性格が災いして、つい退職時期を逸した人)

『魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖7』[山田風太郎/講談社文庫]

 忍法「魔界転生」により魔人として蘇った剣豪たちと、本人も詳細は知らぬまま事態に巻き込まれた柳生十兵衛の繰り広げる死闘の数々が描かれる「魔界転生」、後編。

下巻での見どころはなんといっても十兵衛と転生衆の死闘の数々ですが、それ以外にも、最初に定めた約定をどう破るか、紀州藩を滅ぼしかねない陰謀を十兵衛一行がどうやって食いとめるのか、あるいは少年・弥太郎の思わぬ活躍や柳生十人衆の文字通り命を懸けた行動等、あれこれと盛り込まれた要素がさらに話を盛り上げてくれます。
 転生衆との死闘に関しては、全盛期以上の能力を誇る魔人たちの相手をするには如何に十兵衛といえどかなり際どいというのが、なんともいえない緊迫感になっていますね。……実際、純粋に実力勝負というよりも、ギリギリのところで何某かの要素が絡んで勝ちを拾うパターンが多いものなぁ。
 最後の一戦は別枠として、転生衆との勝負で印象深かったのは、柳生谷の一戦かな。相手が人ならざるものとなり果てたと理解してもなお、彼の人に刀を向けなくてはならないという事実に苦悩し、そして勝敗決した後の十兵衛の姿が、なんとも、ねぇ……。あと、映画とかでは扱いの大きい(この人は名前出してもいいと勝手に判断)天草四郎が意外とあっさり、だったのはある意味吃驚だった。
 その他印象に残っているのは、松平伊豆守が頼宣公に目通りする場面。わずか数ページ、台詞もさほど多くないにもかかわらず、静かな迫力と存在感がはっきり伝わってくるのが凄い。あと、ロマンスというには控えめですが、十兵衛を転生衆に転ばせるという目的で近づきながら彼に心動かされたある女性の、最期に至るまでの行動には切ないものがありました。

 幾度もの死闘を潜り抜けた十兵衛を、最後に待っているのは最強の魔人。絶対的な強さを誇る相手との死を覚悟した戦いは、尋常でない緊迫感といい神がかった描写といい、ただただ、圧巻。そして、全てが終わり去りゆく彼の胸に去来する思いは如何なるものか――どこか哀愁漂うラストが物語に余韻を残します。

作品名 : 魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖7
    【 amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 山田風太郎
出版社 : 講談社文庫(講談社)
ISBN  : 978-4-06-264543-0
発行日 : 1999/4/15

『魔界転生(上) 山田風太郎忍法帖6』[山田風太郎/講談社文庫]

 今月の「山風作品の感想を書こう!」企画は、数ある山風作品の中でも様々なメディアで幾度も扱われている影響もあってか飛びぬけて有名で、最高傑作として推す人が多いこちらを。「忍法帖」の一角にして「十兵衛三部作」の2作目に当たる作品。ちなみに十兵衛三部作は全部そうだけど、一応「忍法帖」シリーズに分類されていて実際に「忍法」が一つの要素としては使われているけれど、他の忍法帖のそれのような「忍法勝負」は行われないという特徴あり。

 ざっくりしたあらすじは、島原の乱を生き延びた妖軍師・森宗意軒。紀州大納言・頼宣を御輿に徳川転覆計画を企てる彼の計画の駒となるのは、超絶的忍法「魔界転生」によって名高き剣豪たちが血と殺戮に酔った魔人として再生した「転生衆」である。しかし、転生衆に加えようと画策していた柳生十兵衛は、紀州藩の異常に命を懸けて急をもたらした三人の老臣たちの願いと残された娘たちの仇討ちのために、その陰謀の詳細は知らぬまま「柳生十人衆」と称する愛弟子たちとともに転生衆との死闘を繰り広げていく――という感じ。
 ……で、いざ感想を!と思ったところで、「面白い」以外に何を書けばいいんだろうこの作品……と思わず頭を抱えてしまったわけですが(駄目駄目) えーと、正直なところを言えば、やや私の好みから外れているため個人的お気に入り度はさほど高くない作品だったりするんですよねこれ。しかし、エンターテイメントに徹した内容と手に汗握る緩急の利いた展開には、一度読み始めると最後まで問答無用で引っ張られて止まらなくなるほどの魅力が間違いなくありますし、最高傑作として推す人が多いのも納得の作品だとは思っています。
 上巻のおよそ三分の一、200ページ以上費やして描かれるのは、転生衆が編制されていく様子なのですが……。名だたる剣豪たちが誘惑に抗いきれず、魔人として蘇っていくその過程は、それまで抑えていた妄執の発露と併せてなんとも強烈な印象が残ります。
 そしてそこから十兵衛が事態に巻き込まれて戦端が開かれるまでにさらに上巻のほとんどが使われることに。この一連の場面では、相変わらず魅力的な十兵衛の存在が地獄に仏という感じ。なにしろ、紀州藩の秘事を前に頼れるのは十兵衛しかいないと必死に駆ける三人の老臣たちと追う転生衆の戦い……というか一方的な惨殺は、生前の彼らからは考えられない所業なので、なんとも言えない気分になってしまうので……。
 そして、上巻のクライマックスといってもいいだろう、転生衆の一人と十兵衛が対峙する場面。『柳生忍法帖』ではまさに別格という風情だったあの十兵衛が危地に立たされるこの場面の雰囲気は、私の語彙ではちょっと形容しがたい。そして、その危機がどんな手段でひっくり返されるのか。それはまぁ、読んでからのお楽しみ、ということで。

 ともあれ、相手が容易ならぬ敵だとは認識した十兵衛ですが、その全容は当然ながら未だ分からぬまま。転生衆とのさらなる死闘は下巻に続いていきます。

作品名 : 魔界転生(上) 山田風太郎忍法帖6
    【 amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 山田風太郎
出版社 : 講談社文庫(講談社)
ISBN  : 978-4-06-264542-3
発行日 : 1999/4/15

『秋期限定栗きんとん事件(上・下)』[米澤穂信/創元推理文庫]

 傾向は違うもののそれぞれ問題ある性向をしていることから「小市民」を志している小鳩君と小佐内さんの物語、第3弾。今回は上下巻構成。

 夏期の事件を経て「互助関係」を解消した小鳩君と小佐内さん。2人の過ごしたおよそ1年が、それぞれに恋人もでき青春を満喫しているように見えるものの、やっぱりもって生まれた性分との折り合いをつけるのはなかなか難しく……という感じの日常パートと、市内で頻発する放火事件を追う新聞部のパートを織り交ぜて語られます。
 まぁなんというか、人間失格とまでは言わないけれど、「普通の人」と一緒にいることで「狐と狼」の特徴がより際立ってたなぁ、という感じでした。特に、狼さんの行動は狐さん以外のフィルターを通して描かれるので、何を目的として行動しているのかが今一つ読み切れず、事件の裏にちらつく影に「ないだろう」と思いつつもつい深読みしまくってしまいましたよ。ちなみに、狼さんの行動の全ては〆の一言でものすごく納得。マロングラッセと栗きんとんのたとえもああなるほど、とこれまた納得。あとそれから、2人(というか小鳩君)にそれなりに頼りにされ、それなりに付き合うことができている健吾君はやはり良い奴だと思ったです。
 で、新聞部パートの主人公とでも言うべき瓜野君は、あーうん若いねーという感じで始終生暖かい視線を送っていたのですが、下巻終盤でその自尊心が木っ端微塵にされてしまうのは哀れというかなんというか。でも、自業自得だから仕方がないよね(身も蓋もない) 狼さんに不用意に手を出したら咬みつかれてしまうのは道理なのですよ、うん。

 さて、高校生活も残り僅か。以前とは少し似て異なる事情からコンビを復活させた小鳩君と小佐内さんの関係はどうなっていくのか。続く冬期の物語が楽しみです。

作品名 : 秋期限定栗きんとん事件(下)
    【 amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 米澤穂信
出版社 : 創元推理文庫(東京創元社)
ISBN  : 978-4-488-45106-6
発行日 : 2009/3/5

0903購入メモ(その2)。

『ろくろ首の客 花の若衆方書抜き帳』[小笠原京/学研M文庫]【amazonbooplebk1
『妖怪アパートの幽雅な日常2』[香月日輪/講談社文庫]【amazonbooplebk1
『厭魅の如き憑くもの』[三津田信三/講談社文庫]【amazonbooplebk1
『若さま侍捕物手帖3』[城昌幸/ランダムハウス講談社時代小説文庫]【amazonbooplebk1
『エノーラ・ホームズの事件簿 ふたつの顔を持つ令嬢』[ナンシー・スプリンガー/小学館ルルル文庫]【amazonbooplebk1
『エノーラ・ホームズの事件簿 ワトスン博士と奇妙な花束』[ナンシー・スプリンガー/小学館ルルル文庫]【amazonbooplebk1
『秋期限定栗きんとん事件(下)』[米澤穂信/創元推理文庫]【amazonbooplebk1
『神君幻法帖』[山田正紀/徳間書店]【amazonbooplebk1
『西遊記1』[平岩弓枝/文春文庫]【amazonbooplebk1
『西遊記2』[平岩弓枝/文春文庫]【amazonbooplebk1
『デュラララ!!×5』[成田良悟/電撃文庫]【amazonbooplebk1