『魔界転生(上) 山田風太郎忍法帖6』[山田風太郎/講談社文庫]

 今月の「山風作品の感想を書こう!」企画は、数ある山風作品の中でも様々なメディアで幾度も扱われている影響もあってか飛びぬけて有名で、最高傑作として推す人が多いこちらを。「忍法帖」の一角にして「十兵衛三部作」の2作目に当たる作品。ちなみに十兵衛三部作は全部そうだけど、一応「忍法帖」シリーズに分類されていて実際に「忍法」が一つの要素としては使われているけれど、他の忍法帖のそれのような「忍法勝負」は行われないという特徴あり。

 ざっくりしたあらすじは、島原の乱を生き延びた妖軍師・森宗意軒。紀州大納言・頼宣を御輿に徳川転覆計画を企てる彼の計画の駒となるのは、超絶的忍法「魔界転生」によって名高き剣豪たちが血と殺戮に酔った魔人として再生した「転生衆」である。しかし、転生衆に加えようと画策していた柳生十兵衛は、紀州藩の異常に命を懸けて急をもたらした三人の老臣たちの願いと残された娘たちの仇討ちのために、その陰謀の詳細は知らぬまま「柳生十人衆」と称する愛弟子たちとともに転生衆との死闘を繰り広げていく――という感じ。
 ……で、いざ感想を!と思ったところで、「面白い」以外に何を書けばいいんだろうこの作品……と思わず頭を抱えてしまったわけですが(駄目駄目) えーと、正直なところを言えば、やや私の好みから外れているため個人的お気に入り度はさほど高くない作品だったりするんですよねこれ。しかし、エンターテイメントに徹した内容と手に汗握る緩急の利いた展開には、一度読み始めると最後まで問答無用で引っ張られて止まらなくなるほどの魅力が間違いなくありますし、最高傑作として推す人が多いのも納得の作品だとは思っています。
 上巻のおよそ三分の一、200ページ以上費やして描かれるのは、転生衆が編制されていく様子なのですが……。名だたる剣豪たちが誘惑に抗いきれず、魔人として蘇っていくその過程は、それまで抑えていた妄執の発露と併せてなんとも強烈な印象が残ります。
 そしてそこから十兵衛が事態に巻き込まれて戦端が開かれるまでにさらに上巻のほとんどが使われることに。この一連の場面では、相変わらず魅力的な十兵衛の存在が地獄に仏という感じ。なにしろ、紀州藩の秘事を前に頼れるのは十兵衛しかいないと必死に駆ける三人の老臣たちと追う転生衆の戦い……というか一方的な惨殺は、生前の彼らからは考えられない所業なので、なんとも言えない気分になってしまうので……。
 そして、上巻のクライマックスといってもいいだろう、転生衆の一人と十兵衛が対峙する場面。『柳生忍法帖』ではまさに別格という風情だったあの十兵衛が危地に立たされるこの場面の雰囲気は、私の語彙ではちょっと形容しがたい。そして、その危機がどんな手段でひっくり返されるのか。それはまぁ、読んでからのお楽しみ、ということで。

 ともあれ、相手が容易ならぬ敵だとは認識した十兵衛ですが、その全容は当然ながら未だ分からぬまま。転生衆とのさらなる死闘は下巻に続いていきます。

作品名 : 魔界転生(上) 山田風太郎忍法帖6
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著者名 : 山田風太郎
出版社 : 講談社文庫(講談社)
ISBN  : 978-4-06-264542-3
発行日 : 1999/4/15

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