『三国恋戦記~オトメの兵法!~』、ざっくり感想。

何度かの延期を経て発売された三国志な乙女ゲーム『三国恋戦記~オトメの兵法!~』(公式サイト) 三国志好きとしてなんだかんだで楽しみにしていたので、発売日に確保して以来ニヤニヤしながら遊んでます(不気味)

システム的にはわりとサクサク動くので不満は特になし。個別ルート入って以降、シナリオ・選択肢の量に差があったのは残念ですが、内容的にはバリエーションもあって楽しめたのでまぁ良し。何気に細かい演出があったりして、2周目だとなるほどなるほどーとニヤリとできたりするのも良かった。三国志ネタもほどほどに入ってて、そういう意味でも楽しい。モブ含めて脇キャラもいちいち良い味出してるしなぁ。特に仲謀軍。子敬さんとか大喬小喬とか子敬さんとか子敬さんとか和みすぎる。それと、孟徳軍屈指の苦労人・元譲がとてもとても好きです。なんで攻略対象じゃないんですか……orz

以下、キャラ別感想。ネタバレについてはあまり気を使ってません。
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『楽園』[鈴木光司/角川文庫]

 『リング』等で一世を風靡した鈴木光司氏のデビュー作にして第二回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作、角川文庫から新装版で登場。
 あらすじは簡単に言ってしまえば、思わぬ運命によって引き裂かれた男女が再会を遂げるまでの物語、となるでしょうか。……再会(といってもいいのか悩むところでもある)を遂げるまでに軽く2000年は経っていたりしますが。

 物語は3章構成。全ての発端となる有史以前。部族の掟を破ったがために他部族の襲撃を招き、結果として愛する女を奪われた男と、男との再会を信じ続ける女の物語が第1章「神話」。続く第2章「楽園」は18世紀、南太平洋の小島に漂着した船乗りたちが、本人たちが意図する以上にその島に暮らす一族の運命に大きく関わっていく物語。そして第3章「砂漠」は、現代のアメリカ大陸を舞台に、ネイティブアメリカンの血を引く作曲家と雑誌編集者が思わぬ冒険(というか探索というか)を経て出会うまで……と、各話をつなぐモチーフはあるけれど、それぞれある程度独立した話としても読める感じ。遺伝子のレベルにまで刻み込まれるほどの想いを軸に展開される物語は、各章ごとに少しずつ違った魅力で楽しませてくれます。個人的には「楽園」が一番好きかな。脇役のタイラーが良くも悪くもインパクト強かった。

日本ファンタジーノベル大賞(しかも初期)を受賞するぐらいですから、いかにもな「ファンタジー」とは違うかもですが、もしかしたら、いつかどこかで似たような出来事が起きていたかもしれない、とかいろいろと想像を巡らせることが出来るという意味では、立派にファンタジーだよなぁ、と思ったり思わなかったり。

作品名 : 楽園
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著者名 : 鈴木光司
出版社 : 角川文庫(角川書店)
ISBN  : 978-4-04-188013-5
発行日 : 2010/2/25

『浪華疾風伝あかね 弐 夢のあと』[築山桂/ポプラ文庫ピュアフル]

 大坂夏の陣から八年。それぞれの立場や想いをもって若者たちが大坂の街を駆ける青春時代小説第2巻。

 1巻終盤の爆弾発言&それに伴う疑惑はもうちょっと引っ張るかと思っていたんですが、なんだか案外さくっと一段落した印象。まぁ、全面的にすっきりしたわけではなく、それはそれでまた別の疑問が出てくるわけですが……まぁ、このあたりは追々明かされていくことなんでしょうねぇ。そちらだけではなく、物語の内容的にも「第一部完!」な感じで思わず邪推してしまいましたが、作者さんの公式ブログによると以降の予定もちゃんとあるようなので一安心。他のシリーズもあるのでペースは落ちるそうですが、続きが読めるならそれで良いと思う(未完シリーズの山を眺めつつ)
 登場人物絡みでは、茜がいろいろと悩み考えた結果、ちょこっと成長して好感度アップした。自分の中で結論を得て余裕ができていたのは大きいだろうけど、それでも終盤の天秀尼との会話は、1巻の彼女だったら出てこないだろうしな……。あと、お龍が第二主人公的な位置で物語に関わってきたのは少し意外。いや、まさか1巻限りの出番だとは思ってなかったけど、ここまでとは。こうなると、茜との関係も含めて彼女の今後がどうなっていくのかも楽しみ。その他、やっぱり「在天」関係の人だった甲斐と大助の邂逅・一戦を経ての意外な事の成り行きとか、切支丹絡みのあれこれとか、新興商人である鴻池家(お龍の実家)に絡んだ思惑とか、さらりと読めるわりにネタはしっかり詰まっていて面白かった。超常的な要素がほとんどない、こういう真面目な伝奇活劇も良いものです。

 さて、茜たちと甲斐は紆余曲折の末当面は行動を共にすることになったようですが……さて、この先は話をどう展開していくのか。未だ残る数多の謎、そして2人の少女の仄かな想いの行方が気になるところです。

作品名 : 浪華疾風伝あかね 弐 夢のあと
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著者名 : 築山桂
出版社 : ポプラ文庫ピュアフル(ポプラ社)
ISBN  : 978-4-591-11679-1
発行日 : 2010/3/8

『天冥の標2 救世群』[小川一水/ハヤカワ文庫JA]

 「天冥の標」第2巻。遥か未来の物語であった1巻から時間の針は巻き戻され、冥王斑と呼ばれる謎の疫病のパンデミックが起こった現代地球を舞台にした物語。

 なんというか、1巻はSF小説として普通に楽しみましたが、2巻はしんどいなぁ……と思いながら読みました。「白鳥熱の朝に」もそうでしたが、少し先にこういう事態が起きる可能性もなくはないだけに、そこで描かれる群集心理に「ああ……」と思ってしまうんでしょうね。自分もそうしかねないと分かっているだけに、軽く鬱になります。
 そんなこんなで随所で凹みつつも医師や患者等、それぞれの立場で疫病と向かい合う様子が丁寧に描かれていて、面白いというか、「この先彼・彼女たちはどうなるんだろう。少しでも光は見えるんだろうか」と、ハラハラしながら興味深く読みました。同時に、未来とのリンクを感じさせる単語等がちらほらと見受けられ、おお、と思ったり。え、でも800年後まで……なんてことはないよね……?(なんだか嫌な想像をしてしまったらしい)

 この「始まりの物語」ではのちの因縁の発端が生じたというところで幕を閉じましたが、未だ不明なところも多く。このあとにどのような出来事が起き、「メニー・メニー・シープ」に繋がっていくのか。何はともあれ、続きの巻が待ち遠しい限りです。

作品名 : 天冥の標2 救世群
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著者名 : 小川一水
出版社 : ハヤカワ文庫JA(早川書房)
ISBN  : 978-4-15-030988-6
発行日 : 2010/3/5

『THE DAY Waltz 3』[前田栄/新書館ウィングス文庫]

 諸事情から軟禁生活を余儀なくされている少年パウロ@超現実的かつ俺様主義と、本に魂を囚われた錬金術師フィラレテス@根がお人好しのジャパニメーションマニアが17世紀のプラハの街で繰り広げる冒険劇、最終巻。

 大人の事情か、主に「The DAY」内の冒険がいろいろ駆け足になってしまった気もするけれど、最後までパウロ最強伝説は健在だったなぁ……と読後思わずしみじみしてしまいました。
 ともあれ、「The DAY」での結果的に最後になったミッションを経て、現実世界に持ち込まれた諸問題。内心動揺していてもそれを表に出さずにマイペース(≒ゴーイングマイウェイ)で口から出まかせは基本として使えるものを使い倒して問題を片付けていくパウロ君の姿が、実に頼もしいというかなんというか(棒読み) 一方で、フィラレテスに対する態度やら何やら、一度身内と認めた人間にはわりと甘い&それなりに面倒見がいいから、ギリギリのところで完全に「嫌な奴」という評価にはならないんだよなぁ……。

 さて。最後はもういろんな意味で鬼に金棒状態になったパウロ君。これからどうやって自分の力を蓄え、恨み重なる祖父に仕返ししていくのか気になるところではありますが……まぁとりあえず、みんな人生楽しんでください、という感じのラストで良かったです。

作品名 : THE DAY Waltz 3
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著者名 : 前田栄
出版社 : 新書館ウィングス文庫(新書館)
ISBN  : 978-4-403-54150-6
発行日 : 2010/3/9