『エリスの聖杯 3』[常磐くじら/GAノベル]

十年前に冤罪で処刑された公爵令嬢スカーレット・カスティエルの亡霊と、誠実が家訓の地味な子爵令嬢コンスタンス・グレイル(愛称コニー)。性格も考え方もまるで違う凸凹コンビが、スカーレットの「復讐」のために十年前の事件の真相を探るうち、国を脅かす巨大な陰謀に足を踏み入っていく、「小説家になろう」発のクライム・サスペンス3巻&本編完結。

2巻収録分で十年前に起きていた事件の真相が読者にはおおよそ明らかになっていましたが、3巻開始早々にスカーレットとコニーもその真相を察することに。流石に気落ちしている風なスカーレットを見たコニーの、間髪置かずの提案。さらに、雨の中墓の前でひとり俯く婚約者のランドルフへの反応。こういうことをごく自然にできるコニーだからこそ築くことができた関係があって、彼女が敵の罠にかかって処刑という状況に追い詰められたときにそれが発揮される展開にも納得感。
あと、前からだったけど今回も女性陣が強いこと強いこと。セシリア王太子妃も、なぜ彼女がそういう生き方を選んだのかが語られた上でのあの選択……彼女が大なり小なり関わってきただろう行いは無論許されるものではないけれど、それでも、本人が納得して駆け抜けた先に見た人々の幻影に少し心が慰められました。あと、ルチア・オブライエン嬢が最高。え、エピローグで触れられた夏の旅行(予定)で彼女を主役にしたスピンオフとかありませんか(現状、ありません) あ、忘れちゃいけない、ハームズワース子爵ランクアップおめでとうございます(?)

さて。十年前に端を発した陰謀はこれにて終幕となりましたが、「復讐」という名のコニーとスカーレットの凹凸コンビ+ランドルフ閣下の賑やかな日々はまだまだ続いていく様子。とりあえず「なろう」に掲載されている後日談はそのうち書籍化されると嬉しいなあ。

作品名 : エリスの聖杯 3
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著者名 : 常磐くじら
出版社 : GAノベル(SBクリエイティブ)
ISBN  : 978-4-8156-0769-2
発行日 : 2020/10/15

宝塚月組「WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-/ピガール狂騒曲」を観た話。

思い返せば5月。初めて友の会が大親友になってくれた(訳:SS席がご用意された)のに、感染症対策→緊急事態宣言に伴う公演中止(後日リスケジュール決定)・払い戻しとなり、新コロ絶対許さねえ……!と強く心に誓ったあの日からほぼ5ヶ月。席数減らされてるから難しいだろうなあと半分諦め気分だったのに、またもや友の会が微笑んでくれたので念願のSS席で観劇してきました! 以下、あまり難しいことは考えてない感想。
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『京都烏丸のいつもの焼き菓子 母に贈る酒粕フィナンシェ』[古池ねじ/富士見L文庫]

バターと砂糖をたっぷり使った昔ながらの製法に和の食材を合わせた、京都烏丸の一風変わった焼き菓子店「初」。感じの良いかわいい女性店員と、愛想のない青年の菓子職人が営む小さな店に足を運ぶ人々の楽しいことも悲しいこともある平凡で豊かな日常と、お菓子を巡る短編集。

焼き菓子好きとしてちょっと興味を惹かれる美味しそうな表紙につられて購入。
なんだかんだ人気ジャンルなお仕事&食べ物ほっこり系の短編集かと思って読み始め、たしかにそういう要素もあったんですが、それだけじゃなく。収録されている4話とも、各話の視点人物の歩んできた時間や培った考え・想いに寄り添いながら、だからこそ彼・彼女の悩みに魔法のような解決が示されるわけではない。簡単に解決するものでもないわだかまりは、とりあえずそのままにしておいても人間は前に進んでいけるものだし、あるいは何かのきっかけでちょっとは歩み寄る余地が見つかるかもしれない。そんな感じで、綺麗事で終わらないどこかリアルな感触があるというか、多かれ少なかれ「わかるわー」となる短編集でした。
あと焼き菓子の描写がとても美味しそうで、「本当にこんな店あったら常連になるわー」と思いましたね。

最終話で少しお互いの事情に踏み込んだ菓子職人(兼店長)さんと店員さん。共に過ごした時間の分だけ良きコンビとなりつつある彼らの大切な店とお菓子が呼び覚ます、別の日常の物語をいつかまた読めたらいいな、と思います。

作品名 : 『京都烏丸のいつもの焼き菓子 母に贈る酒粕フィナンシェ
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著者名 : 古池ねじ
出版社 : 富士見L文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-073804-8
発行日 : 2020/9/15

『わたしのお人形 怪奇短篇集』[瀬川貴次/集英社オレンジ文庫]

いかにもホラーっぽい表紙が目を引く、「ばけもの好む中将」シリーズの瀬川貴次氏の怪奇・ホラー系短編集。別名義含めた雑誌掲載作4編に書き下ろし3編を加えた計7編収録。

瀬川さんの短編集といえば、別名義(瀬川ことび)名義で出されていた作品が印象に残っていたので今回もそういう感じの作品集を想像していたのですが、ちょっと思っていたのとは違うテイストでした。別名義短編集は真面目に考えるとこわいシチュエーションでも不思議とユーモラスだったり、なんだかんだあってもラストは意外と後味悪くなかったりだったんですが、今回収録されている作品は、なんか微妙に気持ちの悪さが残る感じがありました。いや、ホラー・怪奇物としてはそれが普通だし、内容は悪くなかったんだけど。
気に入ったのは、やっぱりことび名義作品集に雰囲気が近かった「廃団地探検隊」と「私のお人形」「私のお人形 その後」かな。「私のお人形」読了後、表紙がほのぼの記念撮影に見えてくるのはきっと仕様(笑)

作品名 : わたしのお人形 怪奇短篇集
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著者名 : 瀬川貴次
出版社 : 集英社オレンジ文庫(集英社)
ISBN  : 978-4-08-680331-1
発行日 : 2020/7/22