先王の隠し子という巫女姫を擁する七都市が並び立つ地、東和。七番目の姫として擁立された少女・空澄(カラスミ)を中心に移りゆく時間や世界を描いた物語、第6巻にして最終巻。
3年2ヶ月ぶりの新刊で、内容も雰囲気もほとんど忘れかけていましたが、読み始めるとあっという間にこの世界の空気を思い出したような気がしました。それだけに、これで完結は残念だなぁ。何年待ってもいいから、この動乱の行く末を最後まで読んでみたかった。ただ、物語の中で「彼女たち」がただの少女としてではなく、その立場で出会ったことで、一つの区切りと言われればそうと納得もできるかな。
物語としては、東和の勢力図が大きく動いたようで、その実それほど大きくは変わってないような? どちらにせよ、箱庭の中の動乱はまだまだ続く、というところで幕となったのは、個人的にはちょっと意外だったかも。いや、5巻読んだときに、このまま一気に終結の方向に進むのかな、と思ってたので。
登場人物では、皆相変わらずお元気そうでーという感じで。思いがけず、人たらしの才能を発揮するエヅさんが楽しかったです。あと、二宮・翡翠が、なんというか、うん、やっぱり苦手なタイプではあるけれど、頑張れ……と声を掛けてあげたくはなったりしました。
戦記ものらしく各都市の衝突も人の死も身近にあるはずなのに、最後の最後まで不思議と透明感の漂う物語でした。ラストを飾るカラの笑顔が愛おしい。いつの日か、サイドストーリィか何かが読めると良いなー。(続編が一番うれしいけど)
『プリンセスハーツ ~たとえ遠く離れていてもの巻~』[高殿円/小学館ルルル文庫]
大国パルメニアを征服するという目的のため手を組んだ仮面夫婦と主従の戦いと、関係の変化を描くシリーズ第10巻。次巻でいよいよシリーズ完結ということで、伏線回収やら何やらで一気に事態が動いております。
今回、これまではほとんど描写のなかったメリルローズやロレアンに割かれるページが多かったのが意外ながらも良かったです。ああ、この二人はそういう想いで行動してるのね、と。まぁ、メリルローズはまだ掴みどころがない部分も残ってますが、それでも彼女の人柄や想いといったものが垣間見えたことで好感度やや上昇。あと、元仮面夫婦なアジェンセン大公夫妻は、相変わらず遠距離でもらぶらぶだった。つーか、あの夢は……らしいっちゃらしいけど、もうちょっとこう、ね……。
話の本筋では、墓場や古より続く精霊信仰などについての謎が次々と明らかになっていくのを「ほー」と思いながら読んでいたところ、後半でさすがに予想してなかった大どんでん返しが発生。ああ、それなら確かに疎まれるわな……と納得しつつ、その事実に動揺しながらも、最終的には自分の野望を貫く決意をしたルシードは実に男前だと思いました。ラスト一行のアレは、まぁ、彼はそういうつもりなんだろうなと予想するものはあるんだけど、さて、どうなるか。
泣いても笑ってもあと1冊。はたして、この物語がどんな結末を迎えるのか、楽しみです。
『金星特急4』[嬉野君/新書館ウィングス文庫]
謎の美女・金星の「婿候補」として、一寸先は闇どころか何が起きるか分からない列車に乗り込み、なりゆきから一緒に行動することになった3人組の冒険……のみならず、どんどんスケールアップして行ってるシリーズ、第4巻。
個人的には今回メインの舞台になったのがイスタンブールということでときめきました。とてもときめきました。大事なことなので二度言いました。
まぁそれはさておき、3巻で一気に話と世界が広がった印象のあるこのシリーズですが、4巻もますます謎も増えて登場人物も増加というかなんというかで、盛り上がりました。
登場人物では錆丸の兄ちゃんとか月氏の面々とか人数が絞られてきたその他の「花婿候補」とか金星のところに集められた女の子達とかいろいろいましたが、個人的には暁玲さん再登場が! 「ひっぱたいてやりたいのです」の一言に惚れた。あと、1巻でなんか得体の知れない感じで登場した月長石を苦もなくあしらうわ全世界規模で動いてる組織に目をつけられてるわの殿下が怖い怖い。メイン組では錆丸が身体的なそれのみならずいろいろと成長しているなーと感心したり、砂鉄とユースタスにニヤニヤゴロゴロしてとても大変でした。
いつの間にか本誌もこっそり購読しはじめているので餓えはまだマシなのですが(本誌発売マダーとなっているので結局一緒という説もある)、まとめて読むと書き下ろしもあるしやっぱり面白い。というわけで、本誌も文庫も早く続きが出ますように(祈←無茶言うな)
2011年7月の購入予定。
毎月恒例購入ほぼ確定組の自分用備忘録。
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『Fate/Zero(6)煉獄の炎』[虚淵玄/星海社文庫]
「Fate/Zero」商業版最終巻。そして、物語は10年後の第五次聖杯戦争――「stay night」へ。
いやー、やっぱり面白かった。残るべくして舞台に残った人間と英霊たちが繰り広げる最終決戦は、どれもが見ごたえありでした。しかし、表主人公たる切嗣とセイバーが、それぞれに絶望と対峙することになる展開はなんともはや。まぁでもセイバーは、ここで徹底的に打ちのめされておかないとSNでの彼女に繋がらないしなぁ。あまりの報われなさが可哀想だけど、仕方がないと思うしか。切嗣は、最期には士郎に己の原点を思い出せたわけだし……まぁ、悔恨も無念も多かろうけれど、悪くない最期、だったんじゃないかなと。
そんなこんなでどこか虚無的な結果に終わったセイバー組に対して、裏主人公もしくは真主人公といっても過言ではないライダー&ウェイバーの戦いの結末は、実に良いものだったと思います(そこか) 豪放磊落な征服王が格好良いのは今さら言うまでもないので置いておくとして。ウェイバーはのちの生存が確約されている数少ない人間だったのである意味彼のパートは安心して読めていたんですが、それはそれとして1巻当初からこうも成長するとは想像もしていませんでした。グレンさんとのやりとりとかエピローグでの描写が好きだわー。
その他では、とりあえず我様の最強ラスボスっぷりが素敵だった。ウェイバーとのやりとりとか『この世全ての悪』を肯定する場面とかは、そうそう迂闊なだけじゃないんだよこの人は、と嬉しく思った。言峰は、「ああ、これでこそ言峰だよね……」という感じ。そしてもう一人、雁夜は……彼自身は幸せな幻想に浸って逝けたので悪くない結末でしょうが、桜がね……彼女が解放されるまで10年かかるのかと思うと、悲惨の一言。あと、彼女の影に隠れてるけど凜も置かれた境遇はわりと酷いし。次世代組頑張れ。
原点へと至る悲劇の物語、再読でしたが堪能いたしました。久しぶりにSNやり直したくなったぐらい。……ところでhollowの移植はまだでしょうか。