『陸小鳳伝奇2 繍花大盗』[古龍/早稲田出版]

江湖を騒がす謎の盗賊、「繍花大盗」。髭を生やした男だというその盗賊は、華麗な牡丹の花を刺繍する一方で対峙する者を瞬く間に盲目に仕立てるという。陸小鳳は、ひょんなことから捕り手として名高い金九齢に力を貸すことに。

 陸小鳳シリーズ第2巻。独立した話かと思いきや、微妙に1巻からの続きといった側面があり。しかも、リンク部分の一部(というか登場人物というか)は今回の翻訳版で補完された箇所なため、小学館文庫版を読んでる方でも一度は何とかして早稲田出版版に目を通される方がよろしいかと。
 それはさておき、今巻の感想。あらすじやなにやらからはミステリ色が強い話なのかなーと思っていたのですが、読んでみると案外そうでもなく(つーか、逆に期待しすぎると……かも) 公孫大娘が陸小鳳を評して「おまえはなぜかしらいきなり賢くなるときがある」と言ってましたが、正にそんな印象。1巻に引き続き、あれやこれやと動いているうちに、いつの間にやら事件解決の糸口をつかんで黒幕追い詰めてますよこの人、みたいな。これで面白くなければキレますが、この人の場合は面白いから何でもいいです(適当)
 登場人物の話。花満楼は出番少な目でしたが、数少ない登場シーンではその良い人振りを見せつけてくれました。とことん良心的存在ですな彼は。西門吹雪は1巻でも退場となった某場面の影響で、今回出番なし(彼に関する序盤の会話では、思わず噴出しました) この二人が実質休みだった影響があるのかないのか、陸小鳳は主役として奮闘。終盤に用意されている「繍花大盗」との決闘では、素で「うわ、この人本当に強かったんだ!?」と少し彼を見直しました(失礼) あと、今回ある意味大活躍だったのは、1巻でも少し登場した司空摘星ではなかろうかと。最初は陸小鳳と「子供の喧嘩か」というような勝負の話も楽しかったですが、再登場時の行動がまた良かったと思います。最後になりましたが、剣客・葉孤城もかなり傍迷惑な登場。これだけだと何しに出てきたんだこの人?という感じですが、次への顔見せだと思えばまぁこれはこれで(贔屓目)
 「繍花大盗」を巡る事件は苦い結末になりつつも無事解決。けれども、陸小鳳には新たな気がかりが。彼が出向こうとしている先では一体何が待ち構えているのか、というところで以下3巻へ。

作品名 : 陸小鳳伝奇2 繍花大盗
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著者名 : 古龍
出版社 : 早稲田出版
ISBN  : 978-4-89827-315-9
発行日 : 2006/5

心配。

須賀さんが再び体調を崩されているようで。新刊を早く読みたい気持ちがないといえば嘘になりますが、やはり人間体が資本。とにかく今は休養を優先して、じっくり体を治していただきたいです。……つーか須賀さんの場合、普段のペースが速いからたまに待たされるぐらいいいや、と思う……日頃の行いの差だよねぇ(いろんな作家を思い出しつつしみじみ)

ちょっとデザインいじってみた。

…………切実にデザインセンスが(以下略) まぁでも、前回のデザインよりは納得できるものになった、かな? えーと、あと何とかしないといけないのは過去記事一覧の作成か。……うーん、本気でhtml時のをそのまま使おうか(こら)

『陸小鳳伝奇1 金鵬王朝』[古龍/早稲田出版]

江湖の遊侠・陸小鳳の元に持ち込まれた依頼。それは、滅亡した金鵬王朝の財宝を取り戻すことだった。親友の花満楼や剣客・西門吹雪らの協力を取りつけた陸小鳳は、財宝を奪ったという3人の家臣を追うが、思いがけず複雑な事態に巻き込まれていく。

 武侠御三家で一番好きな古龍の代表シリーズその一、出版社を移動して邦訳再開。小学館文庫版を所持&しばしば読み返しているのでストーリィは大体覚えているのですが、表現が微妙に変わっていたり削られた部分が復活していたりするのでちょっとした新鮮味も味わえました。
 なんだかんだで正統派な金庸作品と比べると、古龍作品はハードボイルドやらミステリやら剣豪小説やらその他諸々の要素をごった煮にしたような感じ。良く言えば破天荒で自由奔放、悪く言えば行き当たりばったりでしっちゃかめっちゃかな話の展開がこの作家の持ち味なのですが、この作品も例に漏れず。1作目ということもあってか登場人物紹介編というノリも強いですが、それでも面白いのだからたいしたものだと思います。
 そんな話を引っ張っていく登場人物も個性的な面々が勢ぞろい。主人公の陸小鳳は、まさに「遊侠」といった感じの茶目っ気も備えた伊達男。武術の腕も相当という設定ではありますが、作中で目立っているのはやはり頭脳派というか探偵役としての活躍かと。彼の行くところ人死が出まくりますが……まぁその辺はお約束、ということで。彼の相棒とも言える花満楼は、物腰も柔らかな盲目の貴公子。物語の良心的存在ですが、時々(結構頻繁かも)何気にキツイ一言を発したり只ならぬ腕前を見せてくれたり。陸小鳳と彼のコンビはなんとも良い感じで(変な意味じゃなく)、読んでいて楽しいです。そしてもう一人、一際強烈な存在感を放つのが孤高の剣客・西門吹雪。初登場時の一文がむやみやたらと格好良い。物語中でも、「一度抜けば必ず殺す」の信条に従ってその腕を振るってくれます。実質役に立ってないとかは言っちゃ駄目。この作品で活劇は彼のためにあるのですから(断言)
 他の登場人物も、話に深く関わってくる人から(今回は)端役で終わった人まで多士済々。冷静に考えればわりと酷い展開のはずなのに、最後までどことなくユーモラスな雰囲気が失われないのは、これらの登場人物の力が大きいんだろうなーとしみじみ思いました。

作品名 : 陸小鳳伝奇1 金鵬王朝
著者名 : 古龍
出版社 : 早稲田出版
ISBN  : 978-4-89827-322-7
発行日 : 2006/11

フジミのこと。

名前をあげた責任を取って、このシリーズを愛読していた友人たちの会話を頑張って思い出してみる。えーと、「最近ちょっとマンネリ気味」だとかなんだとか喋ってた記憶がうっすらあります。具体的にどの辺りからかと言ってたかは覚えてませんが、年代で言えば1999年前後ぐらい? ……あやふやにも程があるしそもそも当てになるかどうか分かりませんが、一つの目安にでも。