『遠まわりする雛』[米澤穂信/角川書店]

 約2年ぶりに発売の「古典部」シリーズ第4弾。今回は入学からの1年間で古典部の面々が遭遇したさまざまな出来事を切り取った短編集。

 雑誌連載を追いかけてないので久しぶりの古典部でしたが、相変わらずの雰囲気で楽しかった。刷り込みも多分にありそうですが、やっぱりこのシリーズが一番好きだなーと改めて思ったり。
 内容的にはこれまでどおりの日常の謎系で、短編集ということもあってかその中でもとりわけ他愛の無いものが多かった印象。表題作の書き下ろし「遠回りする雛」なんか、ミステリ部分がなくても青春モノの一幕として十分すぎるほど成立してるし。個人的に一番読んでて楽しかったのは「あきましておめでとう」。ひょんなことから納屋に閉じ込められてしまった奉太郎とえるがどうにか脱出しようとする、まぁそれだけの話なんですが、なんか地味にツボにはまったというか。とりあえず面白かったです。あと、些細な会話とちょっと変わった校内放送から始まる「心当たりのあるものは」もお気に入り。最後のシメが良かった。
 あと今回は、恋愛方面がなかなか楽しめました。「手作りチョコレート事件」で描かれた里志と摩耶花の駆け引きは、ほろ苦く切なくてなんとも良い味。で、「遠まわりする雛」では、奉太郎の意識に変化が。彼らの関係の変化も、これからの楽しみになりそうです。(どうでもいいけど、彼らの抱える感情に「あー青春、というか若いねぇ」などと思わずつぶやいてしまうような年齢になってしまったのを自覚し、ちょっと凹んだ)

作品名 : 遠まわりする雛
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著者名 : 米澤穂信
出版社 : 角川書店
ISBN  : 978-4-04-873811-8 → 978-4-04-427104-6
発行日 : 2007/10 → 2010/7/24(文庫化)

最近また体調不良気味。

とりあえず今日は仕事も休みだったので、部屋でごろごろ読書中。普段からごろごろしてるという説もありますが。
しかし、この状態になるとなかなかPCに触れないのでちょっと退屈です。(←しんどいから、というより、メインPCが居間にあるため。起きてると家族がうるさ……もとい、あれこれ気遣ってくれるんですよねー)

アニメ版「バッカーノ!」第9話。

何気に視聴継続中。で、今回は特急編のクレアに焦点が当たってた回だったのですが。
なによりも、最初の「拷問」をちゃんと原作どおりにやったことに感動した。地上波じゃあ絶対無理だったろうなこれ。
ああでも、「切符を拝見させてください」はもうちょっとこう、別の演出が良かったなー。

『封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ2』[霜島ケイ/小学館ルルル文庫]

 長編伝奇シリーズ「封殺鬼」。若干14歳にして神島の当主となった少女・桐子をメインに据えた昭和編・「鵺子ドリ鳴イタ」第2巻。
 読了後の気分を一言で言うと、「年の差カップル万歳!」みたいな感じ(←いや、まだカップル成立してないから) いや真面目な話、これまでの経験から必要以上に強くあることを己に課しているような桐子に対し、萎縮するでもなく普通に話しかけ、さらに自分のペースに引き込んでしまえる志郎という人は本当に貴重だと思うし、なかなか良い組み合わせだと思いました。釣りの場面と、そこから繋がる終盤のやりとりには思わずニマニマ。
 他、今回は桐子が心揺れる場面が多かった印象。同時に、これまでどれだけ殺伐とした世界で生きていたんだこの娘は……と言いたくなってしまいましたが。中でもミキさんが倒れたあとは、心配や不安を容易に言葉にしない彼女なだけに、菓子入れに絡んだ行動が余計に切実なものに感じられました。
 そんなわけで桐子の内面や志郎の意外なほどの芯の強さなど、登場人物関連では読みどころが多かったですが、肝心の話のほうは進んだような進んでないような……新しい情報や謎は提示されたものの、まだまだ序盤戦といった趣。一応「鵺子ドリ鳴イタ」は3巻完結予定らしいですが、そうなると次巻のボリュームがたっぷりになるのか、はたまた素直に冊数が増えるのか。
 どちらにせよ、1巻に続きとんでもない場面で以下続くになっているので、できるだけ早く続きが読みたいなーと思います。

作品名 : 封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ2
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著者名 : 霜島ケイ
出版社 : 小学館ルルル文庫(小学館)
ISBN  : 978-4-09-452027-9
発行日 : 2007/10/2