『輪環の魔導師 闇語りのアルカイン』[渡瀬草一郎/電撃文庫]

 渡瀬さんの新シリーズは「空ノ鐘~」に続いての異世界ファンタジー。

 読了後の感想としては、シリーズ1作目としては無難にまとまっていて、普通に面白かったというところ。地味ながら堅実に良作をかかれる作家という印象が強い渡瀬氏ですが、今回の作品もその例に漏れずという感じですねー。まぁ、今回の話は展開・設定共に定番かつ地味すぎてこれまでのシリーズと比べてもつかみは弱いような気もしましたが(禁句)、この先きっと盛り上がってくるんだろうと、そこは作者氏を信頼しています。
 あと、迷宮神群の名前が登場したのは驚きつつも嬉しかったですねー。エスハあたりは無理なく出張してこれるような気もするけど、無理かなぁ。……つーか、「パラサイトムーン」もそのうち続きが出ないかな……(遠い目)

 さて、それぞれの目的から共に旅立つことになったアルカインたち。この先、どのような旅が繰り広げられるのか。続きが地味に楽しみです。カボチャならぬ猫氏の活躍も期待。

作品名 : 輪環の魔導師 闇語りのアルカイン
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著者名 : 渡瀬草一郎
出版社 : 電撃文庫(メディアワークス)
ISBN  : 978-4-8402-4066-6
発行日 : 2007/11

『バッカーノ!2002【B Side】 Blood Sabbath』[成田良悟/電撃文庫]

 悪人・善人・悪党・官憲・奇人・変人・人外などなど、一癖も二癖もある連中が入り乱れて繰り広げる馬鹿騒ぎを描いた「バッカーノ!」第9弾後半戦。

 読んだ人全員が同じこと考えるんじゃないかと思いますが、余章の衝撃が凄まじかった。だって、まさか今になってあの人が出てくるとは思わないし……普通に考えれば、「水」でどうこうしたってことなのかなぁ。まぁとりあえず、一体いつの時点で成田氏がこの設定を考えついたのかが気になるところです。
 それはさておき、今回の話の内容としては……成田氏自身がなかがきで語っておられるページ数削減のあおりか、正直、面白いとは思うけどいまひとつノリきらないというか。結局このエピソードそのものは、次巻以降への伏線準備・今後へ向けての登場人物紹介編という色合いが強く出すぎてしまった印象。シリーズ総合で面白いのは勿論良いことですが、そろそろ初期三作のようにエピソード個別で区切りのついている話も読みたいかもしれない。読者の贅沢だと分かっていますが。

 ともあれ、ラストになって思わぬ人物が登場し、より混沌としてきたこの状況で、一体この先どんな「馬鹿騒ぎ」が起きるのか。続刊の発売が非常に楽しみです。

 今回の話にあんまり関係のない疑問。ナイルと殴り合いしてしかも勝ったのって、やっぱりシズちゃんなんだろうか……。

作品名 : バッカーノ!2002【B Side】 Blood Sabbath
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著者名 : 成田良悟
出版社 : 電撃文庫(メディアワークス)
ISBN  : 978-4-8402-4069-7
発行日 : 2007/11

『火鳳燎原(台湾版) 26~28』[陳某/東立出版集團有限公司]

いつものように、中国語ろくに読めないくせに買ってきた台湾版の簡単感想。かなり誤読しているんだろうなぁと自分でも思いますが、気にしない気にしないー(←ちょっとは気にしろ)

えーと、全体的な話の流れとしては、そろそろ呂布退場が近くなってきた感じですが、肝心の呂布が相変わらず最強+配下も精強を誇ってるので、どういう具合に負けていくのかいまいち想像ができません。まぁ、例の3人が再登場してみたり荀彧に「天下を得るために必要なもの」の欠如がやや皮肉っぽく指摘されていたり、こういうところから足をすくわれていくんだろうなーとは思いますが……でもやっぱり想像しがたい。
主人公サイドでは、26巻にしてついにというべきか、司馬懿と燎原火の決別が。正直なところ、この2人はもっと決定的な亀裂が入って道を違えるんじゃないかと思っていたので、互いの望みを認めながらの、こういう余情を感じさせる決別になったのは意外ながらも嬉しい誤算でした。そして燎原火改め趙雲が、司馬家壊滅の一因でもある(ネタバレにつき名前伏せ)を「仲達のため」と言い聞かせながら見逃す場面が地味にぐっときた。……で、こういう書き方するってことは、彼が死ぬときには司馬懿も絡んでくるんだろうけど、そこに行くまでまた何年かかるんだろう(ちょっと遠い目)
それはさておき、趙雲が身を投じるのは当然のごとく劉備陣営なわけですが。張飛が彼を微妙に信用していないのは仕方がないよなぁと思いつつ、その後いろいろあったあとの趙雲の啖呵は格好良かったなーと思います。他、関羽・張飛には呂布戦が、劉備には曹操との交渉と、三兄弟それぞれに見せ場があって満足。
一方、曹操陣営に入りこんだ司馬懿は地味に暗躍というか足場固め中。とりあえず、荀彧や郭嘉との腹の探り合いが楽しいです。それにしても、朗兄ちゃんも実は結構いい性格してるんじゃないかと思った今日この頃。

さて。今のところ、状況は呂布陣営の策士・陳宮の思い描くとおりに進んでいるようですが、このままですむわけはなし。次巻予告には「一老闘四少」との文字が躍っていますが、二~四奇(この程度ならネタバレじゃないだろうと勝手に判断して名前を挙げると荀彧、郭嘉、賈?)と司馬懿を相手取ってどんな頭脳戦が繰り広げられるのか楽しみなところ。

『旋風天戯 ~宿命と血と呪いと~』[瀬川貴次/集英社コバルト文庫]

 神仙の末裔である少女・芦笙と、呪いによって妖魅へと変化しつつある青年・貴琅。「出会ってはならない」二人の出会いからはじまった、中華風異世界ファンタジー4巻目。

 なんというか、このシリーズの感想を書くとき毎回同じこと言ってるような気がするんですが。それでもあえて言わずにいられないぐらいに、「王道万歳ー!」と叫びたくなるような展開でした。具体的には芦笙と貴琅のらぶ方面とか。いやもう、いくらなんでもあんなベタなイベントを持ってくるとは思ってませんでしたよ(←褒めてます)
 内容的にも、芦笙以外にも「鍵」となる少女が?という事実を前に、動揺しつつも改めて互いへの想いを自覚する芦笙と貴琅と、これまた美味しい展開でしたが……それだけに、今回対峙した妖魅の遺した言葉が今後の彼らの関係にどのような影を落とすのか、楽しみなことこの上な……じゃなくてえーと、心配なところです(微妙にわざとらしい口調)
 そうそう、前回から地味に暗躍している例の彼。当初思っていたよりも良い性格をしているようで。今巻でお気に入り度がちょっと上昇(←悪趣味)

 次巻は冒頭から厳しい状況におかれることになりそうですが、はてさてどうなることやら。

作品名 : 旋風天戯 ~宿命と血と呪いと~
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著者名 : 瀬川貴次
出版社 : 集英社コバルト文庫(集英社)
ISBN  : 978-4-08-601094-8
発行日 : 2007/11/1