『ソウルメイトでいこう! 鞠子の占い事件簿』[小川いら/B’s-LOG文庫]

 以前に同作者氏が同レーベルから発売した『横浜危機的少年』も地味に面白かったので、とりあえず購入してみた。

 簡単に内容をまとめると、デザイナー志望の霊感持ち女子大生と将来にやや迷っている何気に金持ちな男子高校生が、ひょんなことから取りついた犬の霊を祓おうといろいろ奮闘する話、というところでしょうか。とりあえず、何かと喧嘩しつつ仲の良い主役コンビにニヤニヤできたので、それなりに満足。話も派手ではないけど、田舎に行ったときの珍道中とかほのぼのと楽しめました。楽しいばかりでなく、犬の霊が成仏できなかった理由というか元凶が判明したときには、ちょっと嫌な気分になったり……まぁ、最終的には元凶には相応の報いがあったので多少は溜飲が下がりましたが。

 普通に楽しいラブコメで面白かったし、また機会があったらこのコンビの別の話が読みたいなー読めるといいなーと思いました。

作品名 : ソウルメイトでいこう! 鞠子の占い事件簿
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著者名 : 小川いら
出版社 : ビーズログ文庫(エンターブレイン)
ISBN  : 978-4-7577-3840-9
発行日 : 2007/11/15

『ソフィアの宝石 -乙女は、謡う-』[渡海奈穂/B’s-LOG文庫]

 両親の死後、伯父の公爵に引き取られた庶民の少女が貴族社会の中で奮闘する姿と、王家に関わる反体制派の陰謀が絡む「ソフィアの宝石」第2巻。

 今回の話は、フィーリス女学院で毎年恒例の感謝祭が近づき、リディアも気乗りはしないものの合唱に参加することになって……というのが導入。起承転結で言えば、承の巻というところでしょうか。
 新しい「家族」との関係は、公爵と最初からそれなりに(珍獣扱いにせよ)好意的なクリフや、なんだかんだでお互い意識しているスレイとの関係は良しとして。使用人たちともそれなりの関係を築けているようだし、台詞がまったくないのでやや判断の難しい公爵夫人もリディアとの距離を残念がってるような雰囲気も感じられるし……そうなると家の中での問題はもっぱら従姉との関係改善がなるのかどうか、ですねー。結構難敵のようだけど、どうなることやら。
 女学院の場面は、嫉妬からくるやりとりなどは「あーまぁ確かにあるよなこういうの」という感じで若干しみじみしたりしつつ、あまり描写のなかった1巻に比べて全体的にらしい雰囲気が出ていて良かったと思います。あと、友人関係では男友達のジルとの関係が良かった。彼には何とか幸せになって欲しいと思うけど、あの状況からどうなるんだろう……。他、スレイから無意識にせよ嫉妬してるような台詞が出てきたのにニヤニヤしてみたり。初登場の王太子も普通に良い人だったので、今後の活躍に期待。

 そんなこんなでリディアと周囲の人間関係を素直に楽しむ一方、見え隠れするいろいろとままならない状況やきな臭い企みがどうなるのかもやはり気になりますね(本筋にあまり関係ないけど、変わったサロンに顔を出したあとのリディアの身も蓋もない感想にちょっと笑った。彼女のこういうドライというか、わりと現実主義なところが好きです) リディアを狙っているなにやら不穏な一派が、この先どのような動きを見せるのか。続きが楽しみなところです。

作品名 : ソフィアの宝石 -乙女は、謡う-
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著者名 : 渡海奈穂
出版社 : ビーズログ文庫(エンターブレイン)
ISBN  : 978-4-7577-3844-7
発行日 : 2007/11/15

『戦塵外史 四 豪兵伝』[花田一三六/GA文庫]

 「大陸」を舞台に様々な時代に生きる人々の物語を描く「戦塵外史」シリーズ、第4巻。今回は、雑誌「ザ・スニーカー」やアンソロジーに収録されていた作品をまとめた短編集。

 雑誌収録時に読んでいた作品もいくつかありますが、それも内容を大部分忘れていたりするのでほとんど初読の気分で読みました。
「ファンタジー」というよりは「架空歴史」と括ったほうがしっくりくる作品の数々は、相変わらず一見地味な印象ではありますが中身は熱い。好みを言えば、もう少し深い描写があればいいなーと思う部分もありましたが、短編だしこんなものかなーという気がしなくもなし。
 人斬りを追う警吏や刀鍛冶、荷駄隊や若き傭兵など、一般庶民というにはやや無理があるけれど歴史の流れの中ではさほど大きな存在でもない人々を主役に据え、それぞれの置かれた立場や状況から繰り広げられていくささやかな物語は、歴史の表舞台に立つ花形たちの華やかな物語とはまた違った面白さが感じられます。中でも一際渋いと思えるのが、「最後の仕事」。皇帝の勅命で痩せた土地に赴任した老官僚。領主となった彼は、この土地に適した作物として「芋」に着目して……という地味なのもここまでくれば素晴らしいというぐらいの話。この話で描写される、地位に執着することなく、ただ己の信念あるいは良心に従い行動する領主の生き様が見事。そしてラストの台詞には、ちょっと格好つけすぎだーと思いつつ、それでもやはり格好良いと思ってしまいます。

 さて、これでこれまで発表されていた「大陸」ものはすべて書籍化されたわけですが、今後完全新作の予定が2つあるとのこと。次は一体どのような物語が読めるのか、発売を楽しみに待ちたいと思います。

作品名 : 戦塵外史 四 豪兵伝
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著者名 : 花田一三六
出版社 : GA文庫(ソフトバンククリエイティブ)
ISBN  : 978-4-7973-4535-3
発行日 : 2007/11/15

『タルト・タタンの夢』[近藤史恵/創元クライム・クラブ]

 ミステリ方面でしばしば名前を聞く作者氏。前から面白そうかなーと興味は持っていたので、ちょっと作品に手を伸ばしてみた。……けして美味しそうなタイトルに心惹かれたわけではありません。ありませんったら(←説得力がない)

 下町のフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台に、客たちが遭遇したちょっとした事件や出来事を、シェフの三舟氏が料理人ならではの知識や着眼点から美味しい料理と共に解きほぐし、お客さんたちも心に残ったわだかまりを解いていく――という日常の謎系のミステリ短編集。扱われる謎はたいそうなものではなく小粒というか地味なものですが、さっくり読めて素直に楽しいミステリでした。舞台となる「パ・マル」の雰囲気と、あるときは小道具に、またあるときは謎の核心となる料理の数々がとても魅力的に描かれているのも好印象に一役買ってます(←食いしん坊)
 収録されている7編はそれぞれの味があって面白かったですが、中でも「オッソ・イラティをめぐる不和」と「ぬけがらのカスレ」、それから「割り切れないチョコレート」が気に入りました。それぞれの物語がどういう結末を迎えるのか明言されていませんが、それでもきっとそれぞれの状況から望める限りのハッピーエンドになるだろうと思える幕引きが後味良し。

 ああそれにしても、美味しいレストランにコース料理を食べに行きたくなる本だった……。

作品名 : タルト・タタンの夢
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著者名 : 近藤史恵
出版社 : 創元クライム・クラブ→創元推理文庫(東京創元社)
ISBN  : 978-4-488-01228-1 → 978-4-488-42704-7
発行日 : 2007/10 → 2014/4/28

11月2週目の購入メモ。

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『平清盛 福原の夢』[高橋昌明/講談社選書メチエ]【amazonbooplebk1
『ももんがあ対見越入道 江戸の化物たち』[アダム・カバット/講談社]【amazonbooplebk1
『ガンダム事典』[皆川ゆか/KCデラックス]【amazonbooplebk1
『チーム・バチスタの栄光 (上)』[海堂尊/宝島文庫]【amazonbooplebk1
『チーム・バチスタの栄光 (下)』[海堂尊/宝島文庫]【amazonbooplebk1

……ゆかさん、第3部が読みたいです……と寂しく呟きつつお布施。