『キャンディ・ポップ』[倉吹ともえ/小学館ルルル文庫]

 昨年『沙漠の国の物語』でデビュー&好評シリーズ展開中の倉吹ともえさんの新作。人間の望みを叶える異種族であるカミと、望みを叶える代償として彼に捧げられてしまった王女の繰り広げるラブ要素含むドタバタコメディ。

 感想。あとがきに「気軽につまめるお菓子のような感覚で、気が向いたときにサクサクッと」楽しめる話を目指したと書いてありましたが、まさにそんな感じで。難しいことは考えず気楽に読める話で、普通に面白かったです。Web連載を読んだ時点ではノリについていけるかちょっと心配でしたが、その辺も案外大丈夫だったし。
 えーと、話の内容的にはあってなきが如しな感じなので省略するとして。とりあえず、カミのザオネイルと王女アイリスのやりとりが楽しかったですね。最初は反発(?)していた二人が徐々に相手を理解し距離を縮めていく過程、さらに彼ら二人にアイリスの幼馴染のレジーを加えた三角関係のドタバタ劇は、ベタながらなんとも良いものでした。

 さて、この先も二人の旅路は続いていくわけで。この1冊で完結でもまぁそれはそれでいいかなーと思う一方、やっぱり目的地に着いた時に二人の関係がどうなっているのか興味がありますし。もし続編が出るなら、とりあえず購入してみようかなーとは思ってます。

作品名 : キャンディ・ポップ
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著者名 : 倉吹ともえ
出版社 : 小学館ルルル文庫(小学館)
ISBN  : 978-4-09-452069-9
発行日 : 2012/12/21

今日は第119回簿記検定の日。

私は今回は受験見合わせしましたが、受けに行かれた皆様、お疲れ様でした。
……11月に1級受験する予定なので、今回の難易度がどうだったのかがちょっと気になるところです(←自分本位)
そっちの勉強ももちろんですが、当初の予定よりも遅れがちな某本命資格試験のほうの勉強も進めないとなー。

『警視庁草紙(下) 山田風太郎明治小説全集2』[山田風太郎/ちくま文庫]

 山田風太郎明治小説全集の2巻目は、元南町奉行所VS警視庁(言い換えれば旧時代と新時代の対立か)による知恵比べが、思わぬ変化を見せていく『警視庁草紙』後編。

 上巻では元南町奉行所の面々が幾度も警視庁を出し抜いていましたが、警視庁もやられっぱなしではなく。警視庁側がご隠居たちの存在を把握していくにしたがって、きわどいところまで追い込まれたりやむなく危ない橋を渡るようになったりと、上巻の時点では思っていなかった緊迫感を幾度も味わうことになりました。このあたりはなんというか、さすがに実際に権力を持っている側の強み、というところか。
 また、連作短編という形式は上巻から変わりないものの、それを長編に転じさせるお得意の手法はこの作品でも用いられていて、いまだ不安定な世相の動きと、各短編に時にさりげなく時にあからさまに散りばめられた川路の思惑が次第に一つの方向性を示していくにしたがって、物語の様相も変化していき……最終的に浮かび上がってくる「日本のフーシェ」川路の凄味、そして終盤に一度だけ用意されていたご隠居と川路が直接会話を交わす場面は、何度読んでもその重みに圧倒されます。

 そして、最終章。西郷の下野から始まった物語は、確かにここしかないと納得の場面で幕となるのですが……時代の流れの前に消えゆくもの滅びゆくものへの哀惜と、見送るものの諦観と悲哀など一言では言い表せないほど多くの思いを抱かせる結末に、ただ嘆息。

作品名 : 警視庁草紙(下) 山田風太郎明治小説全集2
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著者名 : 山田風太郎
出版社 : ちくま文庫(筑摩書房)
ISBN  : 978-4-480-03342-0
発行日 : 1997/5