『八犬傳(下) 山田風太郎傑作大全21』[山田風太郎/廣済堂文庫]

 『南総里見八犬伝』本編を要約して語る「虚の世界」と、華やかな物語とは裏腹に暗雲立ち込めていく滝沢馬琴の実生活を描く「実の世界」の二重構造で語られる、山田風太郎流『八犬傳』下巻。

 上巻の時点では「虚の世界」のウェイトが大きかったですが、下巻に至って「実の世界」のほうが徐々にその存在を増してきます。先達に確かな敬意を持ちながら、しかし冷徹に容赦なく、滝沢馬琴の人間性とそれによって破綻していく彼の実生活が描き出されていくのですが、それが納得できすぎ。「伝奇」を軽く超える悲喜劇性を発揮する「伝記」に、予定調和で進まない浮世のままならなさ&容赦のなさを感じずにはいられません。また、作者自身の意見の投影も、例えば「東海道四谷怪談」の芝居見物後に舞台の奈落で繰り広げられる馬琴・北斎・南北の論争といった形で、物語を損ねることなく取り入れられていることに思わず唸ってしまいます。「虚の世界」も八犬士が揃って以降はやや失速感があるものの、やっぱり面白いし。

 そして、最終章の「虚実冥合」は、その章題から虚構が現実に侵食してくるんだろうかと一瞬思ったりしますが、別にそういうことではなく、八犬伝の物語は物語として大団円に向け疾走し、落魄の一途を辿る馬琴の私生活ととどめとばかりに最大の苦難が襲う様子が同時進行で描かれていきます。この最終章では「虚の世界」のほうははざーっと流れを語られるだけになるのですが、それが瑣末なことだ感じるほど「実の世界」に惹きこまれてしまいます。馬琴の鬼気迫った執筆生活の内実――とりわけ、全盲となった彼と嫁のお路との共同作業が生み出す境地は、決して派手なものではないにも関わらず、もはや「圧巻」とかいう程度の言葉ではまだ生温いんじゃないかと思うほどで。訪ねてきた北斎が見た光景には、確かにこれを目の当たりにしては黙礼する以外の行動はありえないと思わせられます。そして去り際の北斎の呟きに、馬琴のみならぬ業の深さが感じられるのもまた良い。同時に、作中で幾度も繰り広げられてきた数々の問答にもしっかり答えが導きだされているんだからまさに隙なし。ラストまで読んだ時には、「虚実冥合」とは言い得て妙だとひたすら感服する思いでした。

作品名 : 八犬傳(下) 山田風太郎傑作大全21
    【 ※角川版含む amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 山田風太郎
出版社 : 廣済堂文庫(廣済堂出版)
ISBN  : 978-4-331-60654-4
発行日 : 1998/3/1

『八犬傳(上) 山田風太郎傑作大全20』[山田風太郎/廣済堂文庫]

 文化庁による2008年度現代日本文学の翻訳・普及事業の仏語訳対象の一つに選定された、山田風太郎の時代もの。自己評価「A」も納得の傑作……なのですが、もしかしたらそろそろ品切れ状態になりつつあるのかも?(いや、アフィリエイトへのリンクを作成してたらamazonとboopleで新品品切れ状態だったのに気がついて・汗)

 えーと、不吉な事柄はさておき、内容はタイトルからもわかるとおり、日本人なら一度は聞いたことがあるだろう、滝沢(曲亭)馬琴の生み出した一大伝奇長編『南総里見八犬伝』を現代風に語り直したもの――という単純なものではなく。八犬士たちが活躍する勧善懲悪の物語たる「虚の世界」と、書き手たる滝沢馬琴の人物と実生活、そして周囲の人々との関係を描いた「実の世界」とを交互に語るという形式がとられています。

 上巻は「虚の世界」のほうがメインになるでしょうか。読本だからガチガチの古文に比べれば読みやすいとはいえやっぱり最後まで読むにはそれなりの根性が必要(当社比)になる『南総里見八犬伝』の内容を、これは外せないという要素と筋を巧みに選り分け再構成し、さっくり読みやすくて面白い物語に仕上げている手腕は流石の一言。
 一方「実の世界」。こちらはまだ、馬琴を取り巻く状況が暗い兆しはあれども比較的平穏といっても差支えがない状態ということもあって、やや面白みに欠けると感じられなくもない(←ある意味酷い言い草) とはいえその中にも、堅物の馬琴と数少ない友人である気侭な葛飾北斎との会話や、完璧主義を通り越して偏執狂な馬琴の性格から生じる周囲との摩擦、明治もののそれにも似た実在の人物との微妙な交差など、いろんな要素が詰め込まれており意外なほど面白く読めます。また、主に馬琴を通して語られる作家論とでもいうべき数々の考えには作者自身の考えが色濃く反映されていて、それもまた興味深いものがあり。

 何はともあれ、虚実両方の世界がどのような結末を迎えるのか、大いに興味をかきたてられたところで下巻へ続きます。

作品名 : 八犬傳(上) 山田風太郎傑作大全20
    【 ※角川版含む amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 山田風太郎
出版社 : 廣済堂文庫(廣済堂出版)
ISBN  : 978-4-331-60653-7
発行日 : 1998/3/1

スレイヤーズREVOLUTION 第2話。

いつまで続くかわからないけど、とりあえず気が向いたときは感想書こう程度のノリで、第2話の適当感想。
とりあえず今回は謎の小動物ポコタのお披露目編という感じで、リナとの魔法合戦が繰り広げられていました。
で、売り言葉に買い言葉でポコタが余計な事を連呼→リナが増幅唱えだした時は「まさかギガスレ使うんじゃないだろうな」と一瞬思ったけど、さすがにそこまでは理性飛ばなかったようでなにより(笑)
一方、現時点でキーパーソン(のはず)であるワイザーのおっちゃんは、設定改変して本気で勘違いキャラで行くのか、それともやっぱり原作で演じた役回りっぽいのか、まだ判断する材料が少ないなー。個人的には原作寄りできてくれるほうが嬉しいけど、はてさてどうなることやら……って、第3話の予告が誘拐ってまさかすぺしゃるのあの話(そのままかどうかはともかく)やる気なんだろうか。あれがTV的にNGだから魔道戦車とか出してきたんだろうと思ってたんだけど。まぁでも、深夜だしいいのか?
……ところで、ズーマとゼロスの出番はまだ先なんだろうか。