『Fate/strange Fake(5)』[成田良悟/電撃文庫]

数年前のTYPE-MOONエイプリルフール企画に端を発したFateシリーズスピンオフ作品、5巻目。内容としては4巻で始まった病院前のバトルがメイン。バトル描写に力が入った反動なのか作中時間がほとんど進んでいないのは良いのか悪いのか。

感想としてはいろいろとあるんですが、とりあえず一番は「フラット君のヤバさがまた跳ね上がった……」でしょうか。以前の巻で死徒化は効率悪いからやらないと言ってたけどそっちの方法はありなんだとか、デュマに訝しがられたりアルケイデスには「何か」を察せられたりとか、早く設定全部明かしてほしいなあ……。あ、それと出番少なめでしたがエルメロイⅡ世がフラット君のことを心配してる(&教室の卒業生たちに少し言及があった)ことにほっこり。なんだかんだあってもこれだけ心を傾けてもらえるなら、そりゃあフラット君も教授に懐くよね。その他、デュマの能力ある意味無茶苦茶だなとか、警官組がかっこいいな!とか、最初の脱落者(?)があなたになるんですか!とか、シグマ&偽アサコンビが急速にメイン主人公っぽくなってきてるようなとか、ウルク組が揃ってまたやばい感じになってきたとか、いろいろと気になることはたくさん。ラストで病床の繰丘椿が作り出した世界に引きずり込まれた組と、現実世界に残っている組に別れたことになりますが、ここからどう展開していくのか気になるところ。特に、椿ちゃんに相対する組は、彼らが知らぬところで嗤うジェスターの言葉をどうやって覆えしてくれるのかなー(覆してくれないと逆にキツイ)
そうそう、今回も本家Fateや派生作品からの小ネタは読んでてニヤリとしましたが、FGOプレイヤーの大半が「そこのところもっと詳しく!」となったであろうデュマとエドモンのやりとりの完全版がいつか読めますように……いっそFGOにデュマ実装して幕間やってくれてもいいよ……

さて。まだまだ風呂敷を広げまくっているようにも感じるこのシリーズも、あとがきの作者氏の言葉によればこれで中間点らしく。この聖杯戦争がどんな形で収束していくのか楽しみにしつつ、成田先生にはご無理はなさらないよう心から願っております……

作品名 : Fate/strange Fake(5)
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著者名 : 成田良悟
出版社 : 電撃文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-893519-7
発行日 : 2019/4/10

『マルドゥック・アノニマス4』[冲方丁/ハヤカワ文庫JA]

「スクランブル」、「ヴェロシティ」に続く、マルドゥック市を舞台にしたSFシリーズ。シリーズ完結編となる第3部、4巻目。

4巻読了時の感想「やっと! ここまで!!!!!」の一言。いや、あとのための溜めだと分かっていても、3巻までは結構鬱々としてたというか、しんどい展開が続いていたので……。3巻ラストから続く4巻でようやく、その鬱憤が晴れた感じ。
4巻ではバロットがウフコックを救出してから協力者の援護を受けてともに施設からの脱出と敵への反撃を繰り広げる現在と、ウフコックが囚われていた間、それを知ったバロットが彼を見つけ出すまでのことが交互に語られていきますが、バロットの成長が本当に著しくて。もちろんまだティーンエージャーですから至らないところもあるけれど、それでも「テスタメント・シュピーゲル」終盤の涼月を思い出すような頼もしさと安心感がありました。彼女がどんな経験を経て協力者を得てあの場所に辿り着いたのか、ウフコック救出までの空白の時間の全貌が明らかになるのが待ち遠しい。
ところで、「アノニマスはウフコックの死が描かれることになる」という以前のインタビューがありましたが、そこに至る経緯は私が想像していたのとは違うことになるのが確定した(3巻ラストですでにその流れになってたけど)ので、ちょっとほっとしてます。フラグメンツでのあれは悲鳴を上げそうになったから、あれが最期じゃなくて本当に良かったけど……こうなると、「シザーズ」絡みになるのかなあ。

おそらく物語はこれで折り返し地点になるのかな。語られてきた敵のバックボーンと都市の悪徳と腐敗に、バロット&ウフコックコンビとイースター・オフィスと協力者の面々はどう立ち向かうのか。続刊が楽しみです。

作品名 : マルドゥック・アノニマス4
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著者名 : 冲方丁
出版社 : ハヤカワ文庫JA(早川書房)
ISBN  : 978-4-15-031367-8
発行日 : 2019/3/20

『女王の化粧師』[千花鶏/ビーズログ文庫]

人気WEB小説(まず自サイトで公開された後、なろうやカクヨムにも転載されている様子)の書籍化。あらすじ読んだ感じ好きそうな話だったのに加えてみりおんぐらむのt-snowさんが以前からオススメされていたのもあって、購入してみました。WEB版は未読。

5人の貴族令嬢たちが次期女王の座を争っている小国を舞台に、花街の化粧師・ダイが女王候補の一人の専属にと勧誘されるところから物語が始まります。
この1冊だけだと本当にメイン登場人物紹介&導入編という感じ。主人公であるダイの仕事に対する真摯な姿勢と率直な物言いに好感を持ち(読んでて、化粧苦手だからって日頃手を抜いててすみません……という気分にちょっとなる)、ダイが仕えることになる「女王の座から最も遠い」と言われる癇癪持ちのミズウィーリ家令嬢・マリアージュの、しかし垣間見える本質と成長の片鱗ににこにこしながら読み終えました。このふたり以外にも、ダイを直々に勧誘してきたミズウィーリ家当主代行・ヒース、ダイの養親である娼館の主アスマ、職場仲間のティティ等、他の登場人物もそれぞれ魅力的。一方で、読んでいてちょこちょこ「おや?」と首をかしげる描写もあり。結構長い話だから先に続く伏線なんだろうと思いますが、人間関係含めて今後どのように回収されていくのかも気になるところです。

ダイがマリアージュを叱り飛ばしたところで1巻は幕となりましたが、これ、もちろん続きは近々出るんですよね? 楽しみに待ってます。

作品名 : 女王の化粧師
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著者名 : 千花鶏
出版社 : ビーズログ文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-735523-1
発行日 : 2019/3/15

『叡智の図書館と十の謎』[多崎礼/中公文庫]

雑誌「BOC」で連載されていた作品の文庫化。裏表紙の紹介では長編となってますが、短編集というほうがしっくりくるような。連作短編というには各話の独立性が高めだし。

古今東西の知識全てを収めた図書館。長い旅路の果てに辿り着いた旅人。10本の鎖で縛められた扉を守る乙女像の謎掛けに、旅人は正しく答えて叡智の図書館に至ることができるのか――という大枠の物語の中に、守り人の乙女の出す謎に対する答えを導き出すために旅人が携えた石版が物語を映し出すという形で短編が組み込まれているんですが、各話様々な趣向を凝らした内容で楽しめました。個人的には、第5問と第6問、第7問が好きかなー。
大枠の物語のほうは、徐々に人間味を増していく乙女をかわいいなーと微笑ましい気分でみる一方でこの変化が彼女にとって本当に好ましいものなのかどうかと考えながら読み進めていたら……なるほど、そういう着地点かーという。またいつか、永い時の果てに彼らが邂逅する日がくるといいな、と思う終幕でした。

作品名 : 叡智の図書館と十の謎
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著者名 : 多崎礼
出版社 : 中公文庫(中央公論新社)
ISBN  : 978-4-12-206698-4
発行日 : 2019/2/25