まもなく武士の世が始まろうとする平安時代末期、天才歌人として誉れ高い青年・希家と宮仕えの少女・陽羽が都を騒がす怪異の謎を解き明かしていくシリーズ、3巻目にして最終巻。
もう少し続くかなーと思っていたのですが、ここで完結なのがちょっと残念。とはいえ、この先の歴史の流れを思えばここで終わりにしておくほうが慈悲があるような気もするし、うーん。
ともあれシリーズ最終巻となった今回は、かの崇徳院の祟りではないかという怪異に、いつもの面々が巻き込まれていく展開に。事件の真相というより事件の黒幕であった人の想いの深さが印象に残りました。あとはなんだかんだ陽羽ちゃん筆頭に女性陣は結構精神面タフだよね……と思った一方で、希家と義兄の寂漣は、うん、まあ……お互いにいろいろと足りてなかったね、という。しかし寂漣は、彼が以前にやったこと等を考えてもあれぐらいしか落としどころはなかっただろうけど……希家との約束は、いつの日か果たされるといいな。
貴族社会の黄昏もしくは時代の変わり目の薄闇を感じるやや珍しい時期を舞台にした、興味深いシリーズでした。次の作品も楽しみにしています。
作品名 : 百鬼一歌 菊と怨霊
著者名 : 瀬川貴次
出版社 : 講談社タイガ(講談社)
ISBN : 978-4-06-516532-4
発行日 : 2019/8/20