民俗学のフィールドワーク中に「呪われて」しまった大学院生・名鳥歩。周囲で不可思議な出来事が頻発し、命の危険が迫った名鳥に、担当教授が紹介したのは「怪異喰らい」の青年・朽木田千影。ふたりは名鳥が呪われた現場だと思われる福井のある農村を訪れ、「呪い」に迫っていく――というあらすじのオカルトミステリ。
名鳥が「何」に呪われたのかは序盤で明らかになるんですが、「そうか蛇かーそれは厄介だなー」と即座に反応してしまったのは何から得た知識だったろう……百鬼夜行抄あたりかな……?とどうでもいいことを考えつつ。冷静に眺めるとかなり陰鬱な状況な上に結末も苦味のあるものだったにも関わらず、名鳥の微妙にずれたお気楽さ・お人好しさの影響か、読後感はそう悪いものになってないのが面白い。
脳天気なようでさらっとシビアに自分が好きだったり大事だったりするものを選び取っている名鳥と、始終不機嫌で他人と距離がある千影の主役コンビがなんだかんだと距離を詰めながら徐々に呪いの根幹に迫っていく過程はなかなか楽しかったです。つーか、異能持ちの千影よりも名鳥のほうが実は相当変わり者なように思えるのは気のせいですか。気のせいじゃないですよね。
こういう陰が滲んだ雰囲気のお話は好きだし、千影のあれこれとかまだ伏せられてる情報も多そうだし、続刊が出たら嬉しいなーと思います。
作品名 : 民俗学研究室の愁いある調査 その男、怪異喰らいにつき
著者名 : 神尾あるみ
出版社 : 富士見L文庫(KADOKAWA)
ISBN : 978-4-04-073194-0
発行日 : 2019/7/13