花街の薬師として生計を立てている猫猫は、うっかり人攫いに捕まって後宮に売り払われてしまう。そばかすだらけの器量では間違っても帝の目に留まるはずはなく、下働きとして何事もなく年季があけるのを待っていた彼女だが、ある日、帝の御子たちが病に伏していることを知って……
本屋で見かけて、何気なく手にとった一冊。「小説家になろう」でのWEB連載→単行本化を経ての、今回の文庫化のようです。装飾の少ない素っ気ないぐらいの文章ですが、テンポがいいのかさくさく読めました。
宮廷ミステリ&ラブコメ? 自分の体を使った実験もいとわないの毒マニアの主人公が、宮中の陰謀になんのかんのと関わっていく羽目に、という筋立て。後宮という小さな世界で様々な事情や思惑が煮詰まって騒動や事件が生まれていく、その結末を猫猫のドライな視点で見届けていく感じが巧いというか面白かったというか。
あと、メイン登場人物のキャラ付が楽しい。どこまでもマイペースに宮中を闊歩する(本人は控えてるつもりだろうけど、なんかそんなイメージが)猫猫と、彼女の才能を見出し最初は利用するつもりで近づいたはずが……な宦官(となってるけど本人視点では地の文ですらそう自称してないし、途中の描写からして、ですよね多分)の壬氏のなんとも奇妙な距離とちょっとずれた掛け合いがなんだか笑えました。壬氏頑張れ。他、登場する帝の妃たちもなかなか魅力的な人が多くて良かったですね。
WEBで続編連載中らしいので、そのうちそちらも書籍化するといいな。