長編伝奇シリーズ「封殺鬼」、神島桐子主役の昭和編エピソード最終巻。桐子編は、これで一区切りのようです。
読了後はいろんな意味で「うわああああああっ!」と叫ぶしかなかったです。
とりあえず、メインの物語と平行して描かれた三人の乙女たちの恋模様は、妙子と中尉の結末に、これしかなかったのだろうと納得はしつつも切ない気分になり、朔と清香はこれでスタートラインに立ったってことですよねとニヤニヤし、桐子と志郎は問答無用で床ローリングでした。青春だなまったく! ただ一つ言うのなら、志郎……これまでもちょこちょこ失敗はしつつ、それでも飄々と桐子を助け支えとなってきた彼の、人生最大の失敗はあそこであれを言ったことだよ、としみじみ。それを受けての桐子の発言に、天狗編で描かれた「その時」の描写を思い出して、泣きそうになりました……。
一方、学園に封じられた魔性、妙子の内に封じられた魔性を巡る物語は……ああ、なるほど、と苦い気持ちに。結局、いつの世も一番怖いのは人の心か。人ならぬ存在は、ただその在り方を、最初の約束を貫くのみで……嗚呼。それにしても、中尉の推測という形で明かされた穂積宗一郎の思惑は、完全に予想外だったのでぽかんとしました。そうか、そもそもの前提条件が違うんだから、そりゃあ随所でちぐはぐな印象を受けるわな(笑)
さて。桐子と志郎の物語はこれでひとまず幕が降りましたが、「封殺鬼」シリーズそのものはこれからも続いていくと見ていいのかな。使役から解放された鬼ふたりの諸国漫遊記とか、そのうちに読めるといいなーと思います。