自分が犯した禁忌のために、故国の守護者であった竜が甦らない。そうと知らされた少女が、心優しい青年神官と用心棒として雇った傭兵と共に、「竜を復活させるため」死への旅路を歩む――と、そんなお話。
完全にあらすじ買いだったんですが、なかなか面白かったです。f-Clan文庫は恋愛に偏り過ぎない佳作が多くて良いレーベル。このまま独自路線で展開して欲しいところ……と、そんな個人的な希望はさておき。
とある経緯から後天的な不死となったリュシアですが、その体質は彼女に恵みをもたらすわけではなく。相当にひどい扱いをも受け入れてしまうリュシアに、そこはもっと抵抗しても良いのよ……と思わず声を掛けたくなったりした。その読者の声を主に代弁してくれるのが、同行者である神官のユアン。リュシアを葬る役目を負わされ、旅の途中も苦悩しつづけていたユアンでしたが、本当にこの人は良心的な人だった。彼の小さくも良心的な働きかけが、いろんなことが変わるきっかけになったのだなぁ、とつくづく。もうひとりの同行者であるクゥイルは、ある意味予想通りの役回り。あとがきのコメントでちょっと吹きました。
物語としては、わりと王道路線。意外性とかを期待すると物足りない面があったり、ちょっと駆け足気味に感じる部分もあったりもしましたが、全体としてみればシンプルかつ綺麗にまとまった佳作だったと思います。