『戦塵外史 六 双帝興亡記』[花田一三六/GA文庫]

 「大陸」を舞台に様々な時代に生きる人々の物語を描く「戦塵外史」シリーズ、第6巻にして完結巻。

 今回の話は、これまでの作品でもしばしば登場していたガゼルーン帝国の女帝・アイーシアが、一時玉座を追われていた時期を描いた作品、ということになるでしょうか。前半はアイーシアに代わって皇帝となった兄のヴァルキール、後半は北の地に追われながらも力を蓄え、やがて玉座奪還のために動き出すアイーシアの物語となっています。
 アイーシアの話は比較的王道一直線な展開なので、安心して読めたかな。アイーシアが力を蓄えていく過程や側近のハルとの関係の行く末など、ニヤニヤしながら楽しみました。
 もう一方のヴァルキールの話。こちらは、皇帝として権威は手に入れたものの、宮廷を、権力を掌握することができなかった男の孤独さがやるせなかったです。最初は理想に燃えていた人だけに、心が折れた後の描写が余計にね……権威をいいように操っているつもりの相手にここぞという場面で行った反撃すらも、爽快感よりも物悲しさ・哀れさが先に立つ。最期の時、少しは彼の魂が安らぎを感じていたことを祈らずにはいられません。あと、ヴァルキールのパートで忘れてはいけないのは、道化の存在でしょう。ただおどけているようで、実は誰よりも冷徹に物事を見据えている道化の在り方の異質さは、物語の中でも群を抜いていた感じ。そんな彼(?)が何故ヴァルキールの傍に居続けたのか、その理由は判然としませんが……同じ「孤独」なもの同士、幕が下りるまで付き合うのも悪くない、とでも思ったのかな。それにしても、一人次元の違う強さだったな道化……

 地味ながらも手堅い作りで面白いシリーズだっただけに、これで完結というのが本当に惜しいなぁ。「大陸」で起きた様々な事件を拾い上げている、というスタイルなので、いくらでも続けられそうなんですけどねぇ……完結といいつつ、思い出したように続きが出たりしたら嬉しいと思う。

作品名 : 戦塵外史 六 双帝興亡記
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著者名 : 花田一三六
出版社 : GA文庫(ソフトバンククリエイティブ)
ISBN  : 978-4-7973-6082-0
発行日 : 2011/8/12

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