『林檎の庭の秘密』[サラ・アディソン・アレン/ハヤカワ・イソラ文庫]

 表紙の写真がちょっと良い感じだったので、購入してみた1冊。ジャンルは、作者曰く「南部風フライド・マジックリアリズム」だそうです。

 物語の舞台となるのは、アメリカ南部の町バスコム。古い家系に関する数々の不思議な伝承が「そういうもの」として信じられているこの町で、「不思議な才能がある」ウェイヴァリー家のクレアは、遠縁にあたる老女エヴァネル以外とは親しく付き合うこともなく、一人静かに暮らしていた。本人としてはそれなりに満足のいく穏やかな生活を送っていたクレアだったが、ある日、10年前に家出した妹シドニーが幼い娘を連れて帰ってきたことから、彼女の周囲にもさざ波が起きて……というのがおおまかなあらすじ。
 まず、日常の中に当たり前のように「不思議」(そこまで常識とかけ離れたものではない)が受け入れられている町、という設定がとてもツボだった。なんとなく連想したのは「ぶたぶた」シリーズとか「カラクリ荘」とかあのあたり。『林檎~』はロマンス成分の比率も高いので、味わいはかなり違いますが。なんというか、しっとりゆったりな雰囲気。
 物語の主軸はクレアとシドニー、隔意のあった姉妹が互いを認めて新しく絆をつくる過程と、それぞれのロマンスになりますが、同時に彼女たちに関わる人々の姿も適宜描かれていきます。彼らが互いに影響を与えあい(ときに町に伝わる「不思議」に後押しを受けながら)ゆっくりと変わっていく過程が、大げさなものではなくて、なんかいいなぁ、という感じだった。

 うーん、上手く表現ができないのがとてももどかしいですが、ほっと優しい気分になれるとても素敵な物語でした。解説で紹介されている2作目3作目もなかなか面白そうなので、そのうち翻訳されると良いなぁ。

作品名 : 林檎の庭の秘密
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著者名 : サラ・アディソン・アレン
出版社 : ハヤカワ・イソラ文庫(早川書房)
ISBN  : 978-4-15-150009-1
発行日 : 2010/1/10

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