『地獄の花嫁がやってきた(全4巻)』[瀬川貴次/集英社コバルト文庫]

 発売直後に1巻は購入&読了したものの、予想していた以上のノリの軽さに戸惑ってしまい、2巻は機会があったらーぐらいに思っていたのですが。先日、2巻を読んだら「あれ、普通におもしろいよ?」となり、そのまま4巻まで一気読みした。多分、1巻でシリーズのノリをつかんでいたので、2巻以降は素直にノリを受け入れられたんだろうと思う。

 時は平安、世渡り下手で不器用な貧乏貴族・暁信が婚活中に思わぬ騒動に巻き込まれ……というのがざっくりしたあらすじ。シリーズタイトルから想像できる通り、物の怪(というか地獄の住人達というか)も話に絡んできます(祓ったりとかそういう展開はない)
 ラブコメ的には、不器用だけれど、常識的で誠実な好青年の暁信が、婚活中に知り合った夜魅姫(愛称:ヤミー。幼いけれど可愛らしい姫君。しかしその正体は……)の求愛や、型破りで何事にも積極的に関わっていく多佳子のからかいに振り回される様子にニヤニヤします。物語的には、上記三人に、暁信の乳兄弟・実唯や斎院に仕える女房・蘭子、夜魅姫の許嫁・夜叉王や各話ゲストが加わってのドタバタ騒動が普通に楽しくて、つい吹き出したり。……つーか、最初のうちはまだ抑えてた(と思う)のに、最終巻はもういろいろとリミッター外しすぎ。笑ったからいいけど(適当) そんな、平安情緒もへったくれもない軽いノリのシリーズですが、各話とも真面目に押さえるところはちゃんと押さえてあるので、なんというか、無茶やバカやってるばかりではないという安心感はありますね。

 ちょっと不満、というか残念に思うのは、やはり最終巻の駆け足具合ですね。短編も一緒に収録されてるから、本編部分が実質中編ぐらいの分量だったような気がするんだよな……。暁信の「火事場の馬鹿力」の原因とかがちゃんと種明かしされたのは良かったですが、それももう少し早くから匂わせてあったら……いやいや、どうせ○○○ネタならもういっそ全員登場させて……とか、いろいろと考えてしまいます。好みの問題ですけどね。

 ……ところで、巻が進むにつれて多佳子様最強伝説が更新されていく!と思ったのはきっと私だけではないと思いたい。

作品名 : 月の船 星の林 地獄の花嫁がやってきた
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著者名 : 瀬川貴次
出版社 : 集英社コバルト文庫(集英社)
ISBN  : 978-4-08-601338-3
発行日 : 2009/10/2

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