平安時代の京を舞台に、人が転じた鬼やその他さまざまな怪異を鎮める陰陽師たちの姿を描く「陰陽ノ京」シリーズ。約3年ぶりの新刊は、新創刊のメディアワークス文庫からの発売、主役は慶滋保胤から賀茂光榮に交代となっています。
話の内容としては、時の左大臣・藤原実頼を呪詛する符が発見されたことに端を発した、賀茂光榮はじめ陰陽寮の俊才たちの活躍、というところでしょうか。今まではわりと時代背景はさほど、という感じでしたが、過去の因縁として承平天慶の乱が絡んできたり、そもそも今回呪詛の対象となったのが実在の左大臣だったりと史実と絡む部分が増えていたあたり、電撃文庫よりも対象年齢を引き上げてるということなのかなぁ、と思った。……しかし正直なところを言えば、読了後は「あれ、電撃文庫の陰陽ノ京よりもライトノベルっぽい?」と思ったりした。いや、情の描写に重きが置かれた、シリーズ独特のしっとりした味わいは健在だったのですが、なんかこう、若干ながら派手になっているような印象が。……これはやはりあれか、主役の性格の差か……?
えーと、登場人物関係では、光榮と同僚の住吉兼良の仲わるよしぶりが地味に楽しかったり、光榮と藤乃のロマンス未満のやりとりにニヤニヤしたり、ピンチの時でも貴年を口説くことに余念がない吉平に「その甲斐性を保胤にも……!」と思ったり、ちょっとだけ登場した清良に心和んだりしました。保胤と時継もそろって出番があるともっと良かった……。あ、あと百鬼夜行ならぬ山の精の行列はちょっと見たいと思った。
ラストはまだしばらくはこの因縁が続きそうな線が残されて、ちょっと吃驚。こうなると、次の巻はどういう話になるのか、気になるところです。