すっかり年に一度のお楽しみとなったぶたぶたさんの最新作。あとがきによれば、今回のテーマは「スピンオフ」だったそうです。途中でちょっと路線が変わったようですが。
基本的にどの作品から読んでも楽しめる「ぶたぶた」シリーズの特徴ですが、今回の作品集だけはテーマがテーマだけに過去に発表された作品とのリンクがあったり設定が同じだったりするので、派生元の話を読んでおいたほうがより楽しめるかもしれないなぁ、と思いました。……いや、過去作品をほとんど忘れていても十分面白かったから、やはり事前知識がなくても楽しめる、のか?(どっちだよ)
内容的にはいつものぶたぶたさん、という感じ。こうまで毎回、安定してほのぼのできる&楽しめるというのはある意味すごい事のような気がしなくもない。一番印象に残ったのは「十三年目の再会」(『ぶたぶたの食卓』収録)の前日譚にあたる、「桜色七日」。あちらで過去の話として語られた内容を、当事者の視点で語り直した話ともいえますが……何気ない話ではあるのですが、「その後」が分かっているだけに、その何気なさがなんともかけがえのない時間であると感じられ、最後はちょっとしんみりとしてしまいました。
その他、この夏お台場に登場した某ロボットネタも絡んだ「再会の夏」、四苦八苦する作家の姿に思わず吹き出す「隣の女」、久しぶりの刑事バージョン「次の日」や、ぶたぶたさんの次女が微笑ましい「小さなストーカー」、どれも面白かったです。
来年はどんなテーマでぶたぶたさんが読めるのか。今からとても楽しみです。