『紫色のクオリア』[うえお久光/電撃文庫]

 うららさんが運タロ部の人は読むと良いとオススメされていたので手に取ってみた。要約してしまえば、「人間がロボットに見える」女の子・毬井ゆかりと、その親友となった女の子・波濤学の物語……となるのでしょうが、「すこしふしぎな日常(ちょっと百合風味)」の枠で収まらない内容だった。つーか、この表紙でこの中身はある意味とても詐欺だと思う。

 1話目は登場人物紹介編かつ「ゆかりの見え方」に焦点を当てたプロローグ的話。かつてゆかりの親友で、しかしある出来事を境に彼女を目の敵とするようになった女の子・天条七美の存在も交えつつ、ゆかりの見え方、そしてそれ故に生じる特殊性が語られていくという流れ。その能力の真髄に驚きつつも、まぁこちらはまだ「すこしふしぎ」の範疇に収まる話かなーなどと思っていたら、2話目がジャンル的にはSF方面に向かってぶっ飛んでた。なるほど、運タロ部が読むと良いと言われるわけだなぁと納得の内容でした。あとsoundseaさんの「むしろティーパーティー読むと良い」発言にもうむうむと同意。皆川ゆか読者的に解説するなら、プロメテウス思考の持ち主がティーパーティーの世界に放り込まれて、ただ一つの目的を追い求め追い求め追い求め続けて――○○の罪を自覚しないまま○○を○してしまう話、となるかな?(バレっぽいと思う単語を伏せてみたら何が何だかになった。しかも、なにかずれてる気もする。まぁいいや←適当) 映画で言うと「バタフライ・エフェクト」をとても思い出した。無限に等しく繰り返されるトライ&エラーの果て、誰よりも守りたかった人の口から過ちを指摘され、赦され、そして現実と向き合い新しい一歩を踏み出す彼女。その選択が、この物語に関わった少女たち、皆がそろって幸せになれる未来へつながる光の道であることを、そっと願いたくなる心境でした。
 締めくくりとなるエピローグが、タイトルを含めて「さてこれはどういう意味だろう」といろいろ深読みできるのも良いなぁ。

 オススメされないと多分手を出さなかっただろう作品でしたが、素直に面白かった。良かったです。オススメしてくださったうららさんに感謝。

作品名 : 紫色のクオリア
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著者名 : うえお久光
出版社 : 電撃文庫(メディアワークス)
ISBN  : 978-4-04-867904-6
発行日 : 2009/7/10

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