吸血鬼と人間の共存地帯『特区』と、そこに住まう吸血鬼と人間たちの物語、「BBB」シリーズ長編、完結。
敵・味方ともに見せ場が用意された特区奪還戦が、すごかった。本当にすごかった。ジローの呼びかけに応え、その身一つで特区に戻ったミミコ。彼女の帰還が口火を切る形となり、その日その時、特区に集った吸血鬼と人間たちがそれぞれの意思や信念を胸に、最後の戦いを繰り広げる様子は、まさに怒涛のごとく。カンパニー側、九龍側、双方ともに背水の陣。ギリギリの駆け引き、逆転に次ぐ逆転の連続と、どちらに勝利の女神が微笑んでもおかしくないと思える戦いの行方に、手に汗を握りっぱなしでした。
最後の一戦に相応しい敵味方そろい踏みした戦闘は圧巻でしたが、そればかりでなく、登場人物たちがそれぞれに抱く想い、あるいは既に舞台を去った人から受け継がれたもの、日々の中で育まれた絆の深さ等が押しつけがましくなく伝わってくる行動や会話も、間違いなく見どころの一つでした。とりわけ印象に残ったのは、やはりミミコが「九龍の血族」に対して出した答えでしょうか。カーサと対峙する中で紡がれた言葉、交わされた約束、そして、最後にある人に突きつけた勝負。いかにも彼女らしいと納得できるそれは、「宿命的に弱者」であった「導主」アダムとその家族たちが大乱の果てに掴んだ数少ない成果でもあり……なんというか、感慨深かったです。あと、九龍の兄弟たちの絆には何度も涙しました……イラストがまた、いちいち反則なんだよなぁ……。
そして、戦いの後彼らが過ごした1年間。共に過ごす時間がまだ残されていたことが、嬉しくて。ついに目覚めた彼に対し、変わらぬ笑顔で接する二人にまた涙が滲み。最後に語られたエピソードでは、残された人々のその後の足跡が目に浮かぶようで、切なくも温かい気持ちが残りました。
正直、1巻を読んだときはここまで面白くなるなんて思っていませんでしたが、本当に素晴らしい物語でした。考えられる限り最高に素敵で「らしい」終幕までを見事に描ききったあざのさんに、最大級の感謝を。次シリーズも楽しみに待ちたいと思います。
……ところで、あとがきで語られていた「その後」もとても面白そうで興味津々なのですが。Dクラ+のときみたいに、なんらかの形で発売されるといいなぁとこっそり希望。
“『BLACK BLOOD BROTHERS 11 -ブラック・ブラッド・ブラザーズ 賢者転生-』[あざの耕平/富士見ファンタジア文庫]” への1件の返信