前田栄さんの新シリーズは、独自の信仰と文化を持つ山間の小国を舞台にした王道ファンタジーでした。
シリーズ1作目ということで、まだまだ序章というか。導入&基本設定説明&登場人物紹介編という感じの内容でしたが、それでもなかなか面白かったです。
主人公となるのは、養父の後を継いで山賊の頭目となった少年トゥラルク。彼が、実は生後間もなく誘拐された王国の第一王子である、として王国でも切れ者として知られる青年貴族・ヒルクィット卿に保護(というか確保というか)されて……というのが物語の導入部。トゥラルクからしてみれば到底信じがたいことなので、ヒルクイットのでっちあげだという認識なのですが、それにしては思わせぶりな描写が多々あるので、まぁヒルクイットの話には最低でも何割か(もしかするとほぼ100%ぐらい)は真実なのでしょうが。第一王子が生後すぐに告げられた「神託」、そしてヒルクイットの娘に告げられた言葉を思うと……果たして彼の持つ運命が、王国にどのような波乱をもたらすのか、気になるところ。
登場人物については、まだまだ地が出てなさそうだと思う人もいますが、それでもわりと個性的な面々が揃っていて、端々から人となりが自然と伝わってくるそれぞれの行動や会話がなかなか楽しかったです。……それにしても、この先腹の探り合いとか嫌み合戦が楽しくなっていきそうな気配があるのは個人的にはとても嬉しいのですが、そうなると(いろんな意味で)頑張れ主人公負けるな主人公状態が加速しそうだなーと思ったり思わなかったり。
さて。この先どうなるにせよ、波乱の人生を送ることだけは確定してしまったトゥラルクが、とりあえずはどんな苦労をする羽目になるのか。ロマンス増量も期待しつつ、2巻を楽しみに待ちたいと思います。