以前からなんとなーく気になっていたタイトル。先日文庫化されていたことに気がついたので、注文調整を兼ねて購入してみた。
内容は簡単に要約してしまうと大学生兼小説家・矢野俊彦と、その知り合いたちの繰り広げる日常話、というところでしょうか。ただ、主要人物たちには皆ある特徴がありまして……皆さん、いわゆるセクシュアル・マイノリティ。主要登場人物に、ゲイ、レズ、バイ、ノンセクシャル(というよりAセクシャル?)と揃っているのに、ノーマルだけがいないという……。
で、そんなマイノリティな人たちが揃ってしかも題名に「耽美」なんて単語がくっついてたら一体どんな話だー!とガクブルするんじゃないかと思いますが、中身はなんというか、ハイテンション・ラブコメディ? 「体格は超兄貴しかし心は繊細な乙女」な俊彦(ゲイ)が、「世界で一番美しい人」という千里(Aセク)に対して抱く「何か間違ってる間違ってる!」とツッコミいれたくなる数々の想いを筆頭に、生活力0な千里のダメっぷり(しかし、しっかりしてるところはしっかりしてたりする)、暴君美女な彩子(レズ)と潔癖神経質な志木(バイ)の喧嘩するほど仲が良い(?)を地で行くやりとり等がかなりツボにはまってしまい、読みながら何度も吹き出してしまいました。
まぁなんといいますか、ふと考えさせられたりする描写もあったりしつつ、性向のみならず性格もそれぞれに個性的な面々が過ごす、どこにでもあるような(?)友情と日常の物語として、楽しめたという感じです。……つーか、これが10年前の作品っていうのがすごいと思う。内容は全然古くないしなぁ。
そんなこんなで予想以上に楽しませていただいたこの作品、もとは上下巻で発売されていたものが今回の文庫化にあたってナンバリングに切り替わったようで。あとがきでも続編に含みを持たせてあるので、3巻がそのうち発売されることを期待して、のんびり気長に待とうと思います。