同じ作者さんの「占い事件簿」シリーズは普通に面白かったし、時代小説も好きなので購入してみた。
意に染まぬ縁談話を持ちこまれ、家出を決行したとある武家の娘・雛。師と慕う俳聖・松尾芭蕉とその弟子・曾良の旅について行こうと彼らの後を追っているところを、幼馴染の鹿之助に見咎められ、なし崩しに二人は行動を共にすることに――というのがざっとしたあらすじ。
少女小説的には、雛と鹿之助の幼馴染だからこその気の置けない関係や会話、本人たちが意識している以上にお互いを大事に思っている様子など、まぁとにかくニヤニヤものでした。とりあえず、普段男装している女の子がたまに女の子らしい格好をしたときに、どきどきするのは基本だよね!と力強く主張しておきたい。王道万歳。
あと、らぶ方面ばかりでなく、剣客としてそれなりに自信を持っていた二人が実戦でその未熟さを痛感したり、旅の中でただの俳人とは違う顔を見せる芭蕉や曾良、そして彼らを狙った襲撃があったりなど、基本を押さえた話の流れは堅実というか地味というか迷うところですが、普通に楽しく読めました。……まぁでも、時代小説というには何かがいろいろ物足りない感じはあるんだけど。
今回は登場人物たちの人となりや旅路の描写が中心で、それはそれで楽しかったものの、わりとあからさまに何かを隠している様子の芭蕉と曾良の動向等、いろいろ仄めかされてる謎が気になるのも事実であり。まぁ、そっち方面は続巻のお楽しみなんだろうと、期待して待とうと思います。